『民謡音楽』表紙絵濃色で表現された三角形は、強弱のレベルを示唆するようなタッチで、さらに三角形の鋭角部分からは曲線が波状に描写されている。雑誌『民謡音楽』の表紙絵は、夢二によって音楽をビジュアル化したような、リズミカルなデザインで彩られた。
『若草5月号』表紙絵山なりの曲線が連続し、それが層を成している図案は新緑の野山をイメージしているようで、5月号の表紙絵に似つかわしい鮮明なデザイン。夢二は山を愛した画家で、スケッチや日本画の他にも、時には斬新な表現で山々を描いた。
『若草2月号』表紙絵「雪」をテーマにした図案は、『若草』1928(昭和3)年2月号の表紙絵を飾った。黒く塗りつぶされたダイヤ型の面と、金・白・水色で構成されたダイヤ型の面が規則的に組み合わさっているが、白色から水色の部分は扇形にデザインされ、画面は動きを伴いながらも静謐なイメージを醸し出している。
『新少女5月号』扉絵『新少女』1915(大正4)年5月号で、扉ページのカットを飾った植物は「たちばな」で、同ページに掲載された福岡県の民謡「黒田節」の三節“花たちばなも匂うなり……”の歌詞に合わせて描かれた。たちばな(橘)は、5~6月頃に白い花が咲き、その後はミカンに似た直径3cmほどの黄色い果実を付ける。
「竹久夢二といえば、美人画」というくらい、レトロな女性の絵でよく知られている夢二ですが、本や
雑誌の装丁、広告、挿画、パッケージデザイン、ゆかたや絵ハガキのデザインなど、さまざまな分野の
商業デザイン作品を多数残し、今もなお色褪せることはありません。