オフィス移転において、コスト・スケジュール・タスクの管理はとても重要です。中でも「コスト」は工事の種類の多さや規模によって異なるため、オフィス構築で発生する工事を熟知していない限り、全体の費用感を掴むことが非常に難しいかと思います。
そこで本コラムでは、オフィス移転で発生する各工事の費用相場と、費用を削減するためのポイントをご紹介します。
移転初心者の方へ向けた「オフィス移転ガイドブック」もご用意しておりますので、ご移転が初めての方やご興味のある方はこちらも合わせてご覧ください。
オフィス移転にかかる費用の種類
オフィス移転では各フェーズにおいて様々な費用が発生します。本コラム内では以下の3種類に分類し、それぞれの内容や費用相場について解説いたします。
1.新オフィス契約に関わる初期費用 | 敷金・仲介手数料・火災保険料など、オフィスの賃貸借契約に関わる初期費用 |
2.新オフィス構築にかかる費用 | 内装工事、電気・電話工事、設備工事、セキュリティ工事など |
3.旧オフィス退去にかかる費用 | 現在入居しているオフィスの原状回復工事など |
上記3つそれぞれのフェーズで発生する項目について、概算表を参考にしてオフィス移転全体にかかる費用をざっくり把握してみてください。
新オフィス契約に関わる初期費用
まずは、移転先となる新オフィスの賃貸借契約に関わる費用についてです。物件の規模・グレードにより異なりますが、一般的には以下のような費用が発生します。
項目 | 相場 |
---|---|
前賃料 | 契約開始月分または翌月分の賃料が目安 ※契約日によって異なる |
敷金(保証金) | 物件の規模やグレード、オーナーの属性により賃料の3~12か月が目安 |
礼金(権利金) | 賃料の1~2か月が目安 |
保証会社費用 | 保証会社によって異なる |
仲介手数料 | 賃料の1か月分が目安 ※近年では借主の仲介手数料を半額または無料にする仲介会社もある |
火災保険料 | 保険会社によって異なるが、近年は値上がり傾向にあり |
前賃料
賃貸借契約時(入居時)に支払う初月の賃料です。例えば、1月1日から契約開始の場合、1月分の賃料を12月中に支払うことになります。但し、契約日によっては「初月の賃料」の考え方が異なることもありますので確認が必要です。
また、オフィスビルでは契約時に「フリーレント」という一定期間(3~6か月程度)の賃料が無料になる契約条件が適用されることも増えてきています。フリーレント期間中に工事や引っ越し作業に充てることができるというメリットがありますが、共益費は発生する場合が多いので注意が必要です。
敷金(保証金)
賃貸借物件の保証金として預ける費用で、退去時の原状回復工事費用および未払債務などに充当されます。敷金(保証金)は、契約時に支払うことが一般的で、基本的に全額無利息で返金されます。
費用の目安は、物件規模・グレード、オーナーの属性により異なりますが、賃料の3~12か月が目安となります。
償却費とは?
敷金(保証金)のうち、契約終了後も返還されない特約部分を指します。保証金の10%程度が相場ですが、償却費が発生しないケースもあるため、契約書や重要事項説明書をしっかり確認しておきましょう。
礼金(権利金)
賃貸借契約時に貸主に対して支払うお礼金で、基本的に返金されません。店舗物件などに比べるとオフィスビルは礼金(権利金)がないケースがほとんどですが、新築や築浅の物件では設定されているケースもありますので、契約前にしっかり確認することをおすすめします。
費用の目安は、賃料の1~2か月が目安となります。
保証会社費用
保証会社へ保証委託金として支払う費用です。但しオフィスの場合は、賃貸住宅に比べて保証会社の数が少ないため、委託しないケースが多いです。費用は保証会社によって異なります。
仲介手数料
賃貸借物件の仲介を行った不動産会社に支払う手数料で、「賃料1か月分+消費税」が上限となります。費用の目安は、賃料の1か月分が一般的ですが、近年では仲介手数料を半額または無料にする仲介会社もあります。
火災保険料
火災や事故に備えるための保険料で、契約期間中の火災保険加入は原則必須となります。また、貸主が指定する保険会社への加入を指示されるケースが多く、オフィスの場合は「借家人賠償責任保険(しゃっかにんばいしょうせきにんほけん)」と呼ばれる特約が含まれることがほとんどです。建物の構造によって保険料率が変わることもあります。
費用は保険会社によって異なりますが、近年は値上がり傾向にあります。
借家人賠償責任保険(しゃっかにんばいしょうせきにんほけん)
貸主に対する損害賠償を補償してくれる保険。火災だけでなく、爆発・破壊・水漏れも補償の対象となります。
新オフィス構築にかかる費用
次に、新たに入居する新オフィスの”構築”にかかる費用についてです。引っ越し費用をはじめ、オフィスの内装やインフラに関わる工事が発生しますが、新オフィスの規模やデザインによって大きく異なります項目となります。
項目 | 相場 |
---|---|
引っ越し費用 | 約30,000~50,000円/人 |
内装工事費用 | 約30,000円~80,000円/坪 |
間仕切り工事費用 | 約40,000円~70,000円/㎡(材工) |
設備工事費用 | 約30,000~80,000円/坪 |
電気・電話・ネットワーク工事費用 | 約50,000円~150,000円/人 |
セキュリティ工事費用 | 約10,000円~12,000円/坪 |
オフィス家具の購入費用 | 約50,000円~300,000円/人 |
引っ越し費用

移転前オフィスの家具や書類、個人の荷物などを運搬する引っ越し作業にかかる費用です。
家庭の引っ越し作業と同様に、移動する荷物が多ければ多いほど作業人員が必要で、費用は約30,000~50,000円/人(従業員)程度かかります。さらに、荷物を積載するトラックや引越し作業で使用する資材の費用がかかってきます。
内装工事費用

天井や床、壁などへの装飾や貼り替えで発生する内装工事にかかる費用です。
内装は目に入る割合も多いため、空間をデザインする上で非常に重要な要素であると同時に、どこまでこだわるかによって金額差が発生する項目でもあります。
内装工事は、選定する商材のグレードにもよりますが、約30,000円~80,000円/坪 をひとつの目安として考えるとよいでしょう。
間仕切り工事費用

オフィスで個室をつくる場合、造作壁(LGS)やスチール間仕切り材を使用して壁を立てたりするケースが多いと思いますが、スチール間仕切り工事の際の費用は、約40,000円~70,000円/㎡(材工)程度かかります。
意匠性を良くするために間仕切り材の上からさらに装飾を施すケースもあるため、内装工事にかかる費用は多めに見込んでおくことをおすすめいたします。
設備工事費用

空調・照明・給排水・防災工事費など、オフィスの躯体・ビルの設備に関係する設備工事にかかる費用です。これらの設備工事は、B工事と呼ばれる工事区分に属する可能性があるため、あらかじめビルに工事区分の確認をする必要があります。
一概には言えませんが、設備工事は約30,000円~80,000円/坪 程度見込んでおきましょう。
電気・電話・ ネットワーク工事費用

新オフィスにレイアウトに合わせて電気・電話・LANの配線工事が発生します。
材料費と作業員の費用がかかりますが、工事費用の目安としては約50,000円~150,000円/人(従業員)程度かかります。材料費は、移転前のオフィスから転用できる場合もあるため、不足分を購入するようにしましょう。

最近では、持ち運び可能なポータブルバッテリーを活用する事例が増えてきています。ポータルバッテリーを活用することで、常設の電源の設置を減らすことができ、レイアウト変更のたびに電気・電話・ネットワークの工事をする必要がなくなります。
写真:OC(オーシー)/株式会社オカムラ
電話工事についてさらに詳しく知りたい方は、コラム:「電話工事は何から取り掛かればよい?事前に把握しておきたいこと」をご覧ください。
セキュリティ工事費用

入退室をするドアの電気錠や防犯カメラやセンサーなどセキュリティ工事にかかる費用で、約10,000円~12,000円/坪 程度かかります。
オフィス家具購入費用

新たに家具を購入する際にかかる費用です。今回は参考までに、社員1名につきデスク・チェア・収納庫を新規で用意すると想定してみました。セレクトする家具のグレードにもよるため少し幅をもたせていますが、約50,000円~300,000円/人 程度かかります。
旧オフィスの退去にかかる費用
次に、現在入居しているオフィスの退去にかかる費用です。退去する際は、【不用品の廃棄】と借りたときの状態に戻す【原状回復工事】が発生します。
項目 | 相場 |
---|---|
不用品の廃棄費用 | 2t車両で約80,000円/台 4t車両で約150,000円/台 |
原状回復工事費用 | 約50,000~150,000円/坪 |
不用品の廃棄費用
新オフィスへ移動しない家具・家電・備品などの処分にかかる費用です。処分する廃棄費に加え、廃棄物を運ぶ車両費と人件費がかかります。
車両費の目安は、2t車両で約80,000円/台、4t車両で約150,000円/台 程度度かかります。
不用品が多ければ多いほど車両の手配に費用がかかり、さらに作業員費用・運搬費などの経費も発生します。
オフィス移転を機に心機一転、家具を新しく買い替えるケースもありますが、購入費だけではなく廃棄費用がかかることと、さらには環境への影響を考えると、使えるものはなるべく転用することがおすすめです。また、環境面も考慮して可能な限り廃棄を少なくすることをおすすめします。
どの工事にも当てはまることですが、作業が18時以降など夜間になる場合は費用がさらに高くなります。そのため、余裕をもったご移転のスケジュールを計画することをおすすめします。
原状回復工事費用

原状回復工事とは、簡単に言えば【借りたときと同じ状態に戻す工事】のことを指します。ビルによってはテナントが負担しなければいけない工事範囲が異なるため、ビルとの契約内容を確認する必要があります。
工事範囲・工事区分によって金額にバラつきがありますが、原状回復工事は約50,000円~150,000円/坪 を目安にするとよいでしょう。
原状回復工事についてもっと詳しく知りたい方は、こちらのコラム:「【徹底解説】オフィスの原状回復工事の範囲は?トラブルを避けコスト削減につなげるためのポイントとは」をご覧ください。
オフィス移転の費用を抑えるポイント
ここまで、オフィス移転で発生する項目と費用相場をご紹介しました。オフィス移転は規模が大きいほどコストがかかってしまうので、少しでも節約したいところですよね。ここからは、移転費用を抑えるポイントを5つご紹介します。
余裕をもった移転スケジュールの立案
短期間で移転作業をする場合、施工業者のスケジュールを確保できなかったり、夜間作業が発生するなど、費用がかさむ恐れがあります。少なくとも1年以上前から余裕をもった計画や準備をすることをおすすめします。
移転プロジェクトの進め方について詳しく知りたい方は、こちらのコラムご紹介しておりますのでぜひお読みください。
複数業者から見積をとる
新オフィスに必要な要件を整理した上で、複数社から見積を取ることでおおよその費用感を知ることができ、価格交渉などがしやすくなります。徴収した見積を見比べて必要以上に高い項目はしっかりと説明を受け、適正な価格で実施できるようにしましょう。
家具の転用計画を練る
現状のオフィスにある家具をしっかりと把握し、新オフィスのレイアウトを検討する際に家具の転用計画を綿密に行えば、もったいない廃棄・新規購入を減らすことができ、コスト削減に繋がります。
また、不要になった家具は買い取りも可能ですので、サステナブルな観点からも「捨てる」のではなく、可能な限りリサイクルやリユースをご検討すると良いでしょう。
居ぬき物件やセットアップオフィスを利用
最近は、旧テナントのオフィスをそのまま使って入居できる「居ぬき物件」や、ビルオーナーが一部の内装を用意した上で貸し出す「セットアップオフィス」などの選択肢も増えており、新オフィスにかかる工事費用を大幅に削減することができるため、人数規模の少ないご移転の場合にはおすすめです。
また、不動産会社との交渉次第ではフリーレント期間をつけることができたり、オーナーと直接交渉ができて仲介手数料がかからないオフィス物件紹介サービスなどもございます。
ポータブルバッテリーを採用する
持ち運び可能なポータブルバッテリーを活用し、電源に縛られない働き方を取り入れることで、バッテリー新規購入の費用はかかるものの、長期的な視点で見ると「レイアウト変更のたびに発生していた配線関連の工事が不要になる」や「退去する際の配線関連の原状回復工事が不要になる」というコスト削減に繋がるメリットがあります。
また、災害時には電源の供給源としても活用することができるため、非常におすすめです。
オフィス移転業者の選び方
ここまで、「オフィス移転にかかる費用の目安」と「費用を抑えるためのポイント」をご紹介しました。通常の業務と兼任で移転プロジェクトを担当されることが多い総務さんにとって、何でも相談しやすいパートナーとなる会社選びはとても重要です。
費用をおさえつつスムーズに移転プロジェクトを成功させるためには、以下の項目を網羅できる業者をパートナーとして選定することをおすすめします。
プロジェクト全体を一括で管理できる
社員の方々を巻き込んでのプロジェクト遂行と、各工事業者やビル業者など移転工事に関わる人すべてのコスト・スケジュールを管理することはとても大変です。やりとりをする人数も多くタスクの負担が多すぎるため、工事だけではなく、移転プロジェクトのコスト・スケジュール・タスクを管理してくれるプロジェクトマネジメント(PM)が可能な会社を選定することをおすすめします。
プロジェクトマネジメントって何ができるの?という方は、リリカラのプロジェクトマネジメントサービスページをご参考ください。
契約前でもシミュレーション図面作成や費用算出のサポートが可能
大規模なプロジェクトの場合、複数社から提案を受け、その中から業者決定をされるケースが多いかと思います。要望に沿ったシミュレーション図面の作成や、概算費用の算出を快諾してくれる会社を選ぶことをおすすめします。
オフィス移転は長期間に及ぶプロジェクトのため、丁寧に・誠実に・きめ細やかに対応してくれるパートナー会社を見極めることがとても大切です。
現状のオフィスの課題抽出を行い、課題に沿ったプランの提案ができる
社員の方が快適に心地よく働けるオフィスを構築するために、まずは現状のオフィスでの課題点を抽出することが重要です。社内アンケート実施や、ヒアリングからサポートが可能で、新オフィスにおいてそれらの課題を解決できるようなプランを提案してくれるパートナー会社を選びましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は、移転にかかる費用の目安と費用を抑えためのポイントについてご紹介いたしました。
オフィス移転において、コスト・スケジュール・タスクの管理はとても大切です。プロジェクトを成功に導くため、これらを管理してくれるベストパートナーを選定し、理想の働き方が実現できるオフィスづくりを目指しましょう!
最後までお読みいただきありがとうございました!