「最近、肩こりや頭痛がひどい」「長時間座っていると腰が痛くなる」。その原因、実は”机の高さ”にあるかもしれません。机の高さが合っていないと、正しい姿勢が取れず、体に余計な負担がかかってしまいます。
この記事では、理想的な机の高さから、高さが合わない際の対処法まで、オフィスでも在宅でも役立つ情報を図解付きでわかりやすく解説します。あわせて、「働き方に合わせたイス選びのポイント 前編 ~固定席・フリーアドレス~ 」もぜひご覧ください。
目次
一般的な机の高さとは
日本オフィス家具協会(JOIFA)は、一般的なオフィスデスクの高さとして、72cm(720mm)を推奨しています。この高さは、A4書類が入るワゴンを机の下に置ける点や、車椅子でも使いやすい点から、多くのオフィス家具メーカーでも採用されています。
戦後、日本に導入されたデスクの標準的な高さはアメリカ軍の規格に基づく74cmでしたが、その後、1971年に日本人の平均身長に合わせて見直され、70cmが標準と定められました。
現在は、日本オフィス家具協会(JOIFA)が推奨する72cmが主流とされています。これは、外国人労働者の増加や日本人の体格向上等による見直しのほか、机の下に収納する書類サイズの変化や車椅子利用者への配慮などが理由に挙げられます。
最適な机の高さは「椅子の高さ」と「差尺」で決まる
オフィスデスクの高さは72cmが主流とされていますが、必ずしもすべての人にとって最適とは限りません。人の体格、特に身長や座高の違いによって「理想の机の高さ」は変わるため、自分に合った高さに調整することが大切です。
自分に合った理想の机の高さは、次の計算式で求めることができます。
「椅子(座面)の高さ」と「差尺(さじゃく)」を正しく把握することで、自分にとって無理のない、快適に作業できる机の高さを導き出すことができます。ここからは、それぞれの項目について解説していきます。
「椅子の高さ」について
「椅子の高さ」とは、床から椅子の座面までの高さを指し、椅子の高さの目安は「身長×1/4 」(※)で求めることができます。

例えば、身長が160cmの場合、160 × 1/4 = 40cmが目安となります。実際に座っている椅子の高さを測る際は、床から真っすぐメジャーを伸ばし、座面の最上部を計測するようにしましょう。
「差尺(さじゃく)」について
差尺(さじゃく)とは、椅子の座面から机の天板までの高さの差を指し、差尺の目安は「身長×1/6 」(※)で求めることができます。

例えば、身長が160cmの場合、160 × 1/6 = 約26.5cmが差尺の目安になります。計算で求めることもできますが、実際に椅子と机の高さを測って差尺を確認することもできます。
自分の身長にあった机の高さを計算してみよう
前述したように、机の理想的な高さは「椅子の高さ」と「差尺」を足すことで計算できます。自分の身長をもとに目安を確認してみましょう。
・差尺:160 × 1/6 = 約26.5cm
・机の高さ:40 + 26.5 = 約66.5cm
・差尺:170 × 1/6 = 約28cm
・机の高さ:42.5 + 28 = 約70.5cm
このように、身長から導き出した数値を参考にすることで、自分に合った机の高さを把握することができます。あくまで目安ではありますが、快適な作業環境づくりの第一歩として、ぜひチェックしてみてください。
なお、計算結果が標準とされている72cmよりも低くなった場合でも心配は不要です。机や椅子の調整、アイテムの追加など、後述する改善策を取り入れることで、無理のない作業姿勢を実現できます。(※) 上記の計算式や数値は、日本オフィス家具協会(JOIFA)の「安心・安全なイスの選び方」を参考にしています。
あなたの机の高さは適切?簡単セルフチェックリスト
自分に合った高さかどうかを見極めるには、実際の「作業姿勢」や「身体へのフィット感」といった要素も非常に重要です。
まずは、簡単なチェックリストで正しい姿勢を保てているか確認してみましょう。普段の作業中に違和感を感じている方や、体の不調を感じ始めた方は、ぜひ試してみてください。
あなたの机の高さは適切?簡単セルフチェックリスト
※すべて当てはまれば理想的な高さです。気になる点があれば調整を検討しましょう。
机の高さが合ってないと危険?身体に起きる不調とは
机や椅子の高さが合わず、正しい姿勢を保てていない場合、以下のような身体の不調につながる可能性があります。
肩こりや首の痛み
机の高さが合わないと、腕や肩を不自然に持ち上げたり前傾姿勢になるため、肩や首の筋肉に過剰な負担がかかります。その結果、肩周りの血流が悪くなりやすく、筋肉が硬直して慢性的なこりや痛みを引き起こします。さらに、ディスプレイと視線の高さが合っていない場合は、無意識に首を前に突き出す姿勢になりやすく、こうした状態が続くと、症状が慢性化する可能性もあります。
腰や背中の痛み
高さが合わない机では、自然な背骨のS字カーブを保つのが難しくなり、腰に過度な負担がかかります。これが原因で腰痛や背中の張りを感じやすくなり、長時間の作業で症状が悪化することもあります。腰をしっかり支える「ランバーサポート機能」付きの椅子もありますので、検討してみるとよいでしょう。
頭痛・目の疲れ
机の高さが不適切だと、ディスプレイの位置が合わず、視線が上がりすぎたり下がりすぎたりします。これが目の疲れや視力の低下を招き、さらに首の緊張から頭痛を引き起こすケースもあります。目線を無理なく自然に保つことがポイントです。
むくみ・血行不良
机や椅子の高さが合わないことで足が床につかず、血液循環が滞って脚のむくみや冷えが起こりやすくなります。特に座りっぱなしの状態ではリンパの流れも悪くなり、疲労感が増してしまう可能性があります。
正しい姿勢をつくるには?机と椅子の理想的なバランス
チェックリストで「高さが合っていないかもしれない…」と感じた方は、正しい姿勢を保つために、自身の現状を確認してみましょう。ここでは、正しい姿勢を保つために押さえておきたいポイントをご紹介します。
肘が自然に90度に曲がる高さであること

肘が自然に90度に曲がる高さであることが、腕や肩の疲れを軽減する基本条件です。肘が下がりすぎたり上がりすぎたりしないように注意しましょう。
ひざが直角になり、足裏がしっかり床につくこと

ひざが90度に曲がり、足の裏がしっかり床についていることも重要です。これにより血行が良くなり、むくみや疲労の予防につながります。
目とディスプレイの距離は40cm以上離すこと

ディスプレイとの距離も40cm以上離すことが推奨されています。また、モニターの高さは、目線より少し下が理想的です。これにより首の負担が減り、自然な姿勢を維持しやすくなります。
机と椅子の高さが合わないときの改善策
実際には机や椅子の高さをすぐに変えられないケースもあるかと思います。そんな時は、身近なアイテムや工夫で作業姿勢を整えましょう。ここでは、簡単に試せる改善策をご紹介します。
① フットレストを活用して足の位置を安定させる

長時間のデスクワークで足が疲れたりむくんだりすることはよくあります。足置き(フットレスト)を活用すると、足裏の位置を安定させて血流を促進し、疲労軽減に効果的です。特に足が床に届かない方や、椅子の高さ調整だけでは足の位置が安定しない場合におすすめです。
② クッションや座布団で座面の高さを調整する

椅子の座面が低すぎたり硬すぎる場合、クッションや座布団を利用して高さや座り心地を調整しましょう。適切な高さにすることで、腰や背中への負担が軽減し、長時間の作業でも疲れにくくなります。特に腰痛持ちの方は、腰のサポートになるタイプのクッションを選ぶと姿勢の改善にもつながります。
③ 机上台を活用する

デスク自体の高さは変えられなくても、机上台を使えばノートパソコンやディスプレイの位置を高くすることができます。目線が上がることで姿勢が改善され、肩や首の負担を軽減しながら快適に作業できるようになります。
④ 机の脚にアジャスターを取り付けて高さを調整する

机によっては脚部にアジャスター(高さを微調整できる部品)が付いていることがあります。こうしたタイプであれば、床の傾きや椅子とのバランスに応じて、机の高さを手軽に調整することができます。
高さ調整を根本から解決する「昇降式デスク」という選択肢
これまで、机と椅子の高さ調整や姿勢の見直しについて解説してきましたが、どうしても高さが合わない場合は根本的な対策が必要です。そんなときにおすすめしたいのが、デスクの高さを自由に調整できる昇降式デスクです。近年では健康経営に取り組む企業を中心に、導入が増えています。
昇降式デスクのメリット
昇降式デスクは、自分の体格や作業内容に応じて高さを自由に調整できます。座った姿勢と立った姿勢を簡単に切り替えられるため、長時間の座りっぱなしを避け、リフレッシュしながらも健康的に働くことができます。さらに、立ち姿勢になることで周囲と目線が合いやすくなり、話しかけやすくなることから、職場内で自然なコミュニケーションが生まれるきっかけにもなります。

昇降式デスクを導入する際のポイント
昇降式デスクは通常のデスクに比べて費用が高くなる傾向があります。また、電動タイプの場合は電源の確保が必要なため、導入時にはオフィスのレイアウトをあらかじめ検討しておくことが重要です。
(写真:toiro / イトーキ)
机の高さを見直して、快適なデスク環境を手に入れよう
机と椅子の高さを見直すことは、肩こりや腰痛などの身体の不調を防ぎ、集中力を高めるうえで非常に重要です。今回ご紹介した計算方法やチェックリストを活用して、自分に合った高さを知り、適切に調整しましょう。
また、昇降式デスクの導入も、健康的な働き方をサポートする有効な手段です。快適なデスク環境は仕事の効率アップにもつながりますので、ぜひ今回のポイントを参考に理想の環境を整えてください。
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