インナーブランディングとは？施策・目的・成功事例をご紹介

VUCA（変動・不確実・複雑・曖昧）の時代において、企業が持続的に成長するためには、社員一人ひとりが企業理念やビジョンに共感し、自らの行動につなげていくことが重要です。その中心的な役割を担うのが「インナーブランディング」です。社員がブランドの価値を理解し体現することで、エンゲージメントの向上や企業文化の醸成、採用力の強化など、さまざまな効果が期待されます。
本コラムでは、その目的や施策、成功事例をわかりやすくご紹介します。

┗ 理念やビジョンを浸透させ、組織力を強化するポイントを解説｜ダウンロードする

インナーブランディングとは

インナーブランディングとは、企業が自社の理念・ビジョン・価値観を社員に共有し、理解・浸透させるためのブランディング手法です。
一般的なブランディングが外部の顧客や市場に向けて行われるのに対し、インナーブランディングは主に社員に対して理念やブランドイメージを浸透させることを目的としています。
単なる社内啓発活動とは異なり、社員の意識や行動をブランド価値に沿って統一できるため、一貫性のある組織文化の構築や組織のパフォーマンス向上にもつながります。

インナーブランディングの目的

インナーブランディングの目的は、社員に企業理念やブランド価値を理解・浸透させ、組織の力を高めることです。社員がブランドを理解し、会社への共感や愛着が生まれることで、主体的な行動が促され、組織の一体感が醸成されるとともに、人材の定着にもつながります。
さらに、こうした社員の意識と行動の変化が積み重なると、最終的に顧客体験の向上や企業価値の向上にも寄与します。

ここからは、インナーブランディングに取り組むことで得られる具体的な効果について詳しくご紹介します。

ブランド理念・価値観の浸透

「なぜこの会社が存在するのか」「この商品やサービスがどんな価値を提供するのか」を社員が理解することで、社内で共通の判断軸を持てるようになります。社員に理念や価値観が浸透すると、組織内での一体感や帰属意識が高まり、モチベーション向上や主体的な行動の促進につながっていくでしょう。

企業理念や文化を「空間で表現する」ためのオフィス設計・デザインの考え方については、企業イメージを向上させるオフィスブランディング戦略で解説しています。

社員のモチベーション向上

インナーブランディング施策を実施すると、社員は自社事業への共感や愛着を持つようになります。
そうした意識の変化は、ブランドの担い手としての誇りを育むきっかけとなり、仕事に向き合う姿勢やモチベーションを大きく引き上げる要因となります。さらにモチベーションの高まりは社員の主体的な行動を後押しし、組織全体にもポジティブな雰囲気が広がることで、帰属意識の向上や生産性向上も期待できます。

組織文化・一体感の醸成

インナーブランディングを実施することで、社員は企業理念やブランド価値に基づいた共通の考え方や行動を理解し、実践できるようになります。
こうした意識の共有は、社員同士の連携やコミュニケーションが円滑になり、チームワークの強化や組織としての一体感を育む土台となります。

そして、その一体感が社内に浸透していくことで、社員の帰属意識やモチベーションも高まり、組織全体の生産性やパフォーマンス向上といった成果が期待できます。

人材の定着と採用力強化

インナーブランディングによって社員の仕事へのモチベーションが高まり、「この会社で働くことに誇りを持てる」状態になることで、人材の定着や離職率の低下が期待できます。
また、社員がいきいきと働いている環境は、求職者にとっても魅力的に映るため、人材が集まりやすくなる効果もあります。

顧客体験の向上

インナーブランディングは、「顧客体験の向上」、つまり顧客に届ける価値を高めることにもつながります。社員がブランド理念や価値観を理解し、日々の業務やサービス・商品開発でそれを体現することで、顧客に一貫したブランドメッセージを提供できるようになります。
その結果、サービスや製品の質が向上し、顧客満足度やブランド価値の向上にも寄与します。

インナーブランディングを成功させるためのポイント

長期的な視点を持ち、継続的な改善を行う

企業理念やビジョンを社員一人ひとりに浸透させるには、短期的な施策だけで成果を求めるのではなく、中長期的な視点で取り組むことが欠かせません。

インナーブランディングは、組織文化の変革にもつながるプロセスであり、社員の意識や行動を段階的に変えていく継続的な取り組みです。 そのため、定期的にアンケートやヒアリングなどを通じて効果を測定し、課題を分析しながら改善を重ねることが重要です。こうしたPDCAを継続的に回すことで、ブランドの理念が組織全体に浸透していきます。

社員とのコミュニケーションを大切にする

経営層が率先して社員と向き合い、理念やビジョンを自らの言葉で伝えることが欠かせません。
トップの思いが直接伝わることで、社員との間にオープンな対話が生まれ、意見やアイデアを交わしやすい環境が整います。
さらに、社員の声を積極的に取り入れることで、「自分たちもブランドをつくる一員である」という自覚が芽生えます。
こうした双方向のコミュニケーションが広がることで、理念が組織全体に浸透し、ブランドを体現する文化を形づくっていくのです。

全社員参加型の取り組みとする

全社員がブランドの文化を共有し、異なる部門や階層から多様な視点やアイデアを取り入れることで、より豊かで創造的なブランディング戦略が生まれます。
そのためには、社員一人ひとりが自分の意見や考えを積極的に発信できる環境を整えることが重要です。
社員が自身のアイデンティティや価値観をブランドに反映できるようになると、組織への共感とモチベーションが高まり、ブランドの一体感が醸成されます。
結果として、組織全体が一丸となってブランド戦略を実践し、目標達成に向けた取り組みをより効果的に進められるでしょう。

スペースソリューション事業部では社員参加型の企画を複数実施し、部署を超えた意見交換を通じて理解と交流を深めています。
その一環として、アートを取り入れた空間づくりや体験で学ぶ使いやすいオフィスの検討、さらにSDGs研修などを行い、社員の学びと意識の共有を高める取り組みを進めています。

インナーブランディングの施策

施策1：経営層のコミットメント

ブランド形成において、経営層のリーダーシップは中核的な役割を担います。トップ自らがブランド理念やビジョンを体現し、組織全体に推進していくことで、初めてインナーブランディングを成功へと導くことができます。

経営層は、組織のビジョンや理念を明確に伝え、社員にとっての模範となる行動を示すことが重要です。その姿勢が社員に信頼を与え、ブランドの方向性や目標を理解しやすくすることで、組織全体が一丸となって目標達成に向かって進む力が生まれます。

施策2：社員への浸透

ブランドの共通認識を構築するために、以下のような方法で社員にブランドイメージを浸透させていきましょう。

ブランドへの理解を深めるための研修・教育

組織全体が同じ方向に進むためには、ブランドを体現する行動指針を策定し、経営理念やビジョン、ブランドストーリーなどを学ぶ研修を実施することが重要です。社員一人ひとりが自身の役割とブランドとの関係を理解することで、共通の認識が生まれ、組織全体への浸透が進みます。

経営層と社員のコミュニケーションの活性化

社員が企業理念やビジョンを理解するためには、経営層とのコミュニケーションが欠かせません。経営層は、下記のようなオープンなコミュニケーション施策を実施し、ブランドの考え方や取り組みを積極的に共有することが重要です。

• 社内報や社内ポータルで、ブランドストーリーや社長メッセージを定期的に発信する
• 経営層と現場が対話する機会を設け、相互理解を深める
• 社内ランチや社員ブログの公開など、社員同士の交流を促進するイベントや制度を導入する
• 匿名アンケートやオープンなコミュニケーションツールを活用し、意見交換や提案がしやすい環境を整備する

施策3：効果測定と改善

社員への教育やトレーニングを実施した後は、定期的に下記のようなインナーブランディング活動の効果測定を行い、必要に応じて改善を重ねていくことが重要です。

• 社員満足度調査を実施する
• ブランド理解度や行動指針の実践度を測定する
• 顧客満足度や売上などの指標と関連性を分析する

さらに、社員の能力向上を継続的に支援していく姿勢が求められます。具体的には、インナーブランディングの成果を評価制度に反映させることで、社員のモチベーションを高める好循環を生み出せます。また、ブランドを体現する人材育成制度を整備し、社員がブランドの価値観やメッセージを日常業務で実践できる環境をつくることが重要です。こうした取り組みを重ねることで、組織全体が一体となり、ブランドの成長と発展を支える体制を築くことができます。

オフィスはブランド体験ができる場所

オフィスは社員がブランドを日常的に感じる場所であり、理念やメッセージを空間として具現化することで、強い印象と一体感を生み出します。こうした環境の中で働くことで、社員のブランドへの愛着や誇りが育まれ、仕事に対するモチベーションも向上します。 また、ブランドイメージに合致したオフィスは、求職者に対しても企業の魅力を効果的に伝え、優秀な人材の採用にもつながります。このように、オフィス環境は社員だけでなく、外部に対しても企業の価値観やブランドの世界観を発信する重要な役割を果たします。

対外的なブランド発信戦略については、「企業価値を高めるアウターブランディングとは 」のコラムをご覧ください。

リリカラの日比谷オフィスは、「＋1℃」をコンセプトにデザインしました。
社員アンケートを通じて集めた意見をもとに、働きやすさと心地よさを両立する空間を実現しています。
現在、オフィス見学も随時受け付けておりますので、ぜひご見学ください。

オフィスを通じたインナーブランディングの成功事例

ここではリリカラが担当した、ブランドイメージを反映させたオフィス事例をご紹介いたします。

鈴茂器工株式会社様

このコンセプトを体現するため、水の波紋をイメージした円形モチーフの造作家具を10台製作。白を基調に、ブルー系の内装材をアクセントとして取り入れることで、爽やかで洗練された印象のオフィスが完成しました。

また、担当デザイナーへのインタビューをまとめたコラムはこちらです。
移転の経緯からデザインへと落とし込むまでのプロセスなど、普段なかなか聞くことのできない内容を掲載しています。ぜひご覧ください。

サッポロビール株式会社

注目すべきは、ブランドを体感できるプレゼンテーションルームです。壁面のレンガが落ち着いた印象を与える室内には、ビールの試飲が可能なカウンターを設置し、ブランドの世界観を実際に味わえる空間としました。

まとめ

インナーブランディングは、組織力や個々の能力、そして企業価値を強化するための重要なブランディング手法です。社員が実際にブランドを体感することで、ブランドの理念に共感し、誇りや愛着を持つようになります。

ブランドを反映させたオフィス構築は、インナーブランディングの強化に加え、社員エンゲージメントの向上、企業文化の醸成、採用力の強化、生産性の向上など、さまざまな効果が期待できます。

弊社リリカラの日比谷オフィスは、ビルの選定からオフィスデザインまでを一からボトムアップで創り上げた空間です。随時開催しているオフィス見学では、リリカラのノウハウが詰まったオフィス空間をご覧いただくことができます。 ぜひお気軽にお申込みください。