男性の育児休業取得の促進は社会として大きなテーマとなっています。昨年令和4年の育児・介護休業法の改正により、2022年度の男性の育児休業取得率は17.13%で過去最高となり上昇の傾向にあります。
私どもの部門でも半年間の育児休業を取得した男性社員が誕生し、今年の春に復職しました。
社内の育休取得の輪を広げるため、この社員の経験を共有する座談会を開催。育休取得の経緯や会社への打診と上司の反応、取得した感想や金銭事情などを赤裸々に話してもらいました。想定していた以上の多くの社員に視聴いただく会となったその座談会の様子をレポートとしてお届けします。
そして最後に、取得しやすい環境にするためのアクションも解説しておりますので、これから育休を取得される方はもちろん、育休を取得しやすい環境に整えたいと考える経営層の方にも参考になる内容となっております。ぜひ最後までお読みください。
座談会登壇者紹介 | |
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スピーカー: | 長峯(6か月の育児休業を取得) 入社15年目・設計2課の課長・2022年5月に第一子誕生 |
聞き手: | 江部(新米パパ) 営業推進課プロジェクトマネージャー |
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育休取得までの流れ
育休は誰でも取れる?取得対象者について
(江部)まず、育休の制度についての確認をさせていただきたいです。そもそも育休はどのような方が取れる休暇なのでしょうか?
(長峯)育児休業法では、「1歳に満たない子を養育する労働者」が育休を取得できます。性別関係なく同じ条件で取得できるということを、私自身はじめて知りました。
※有期雇用契約を締結している労働者の方でも「子が1歳6か月までの間に契約が満了する ことが明らかでない」という要件に当てはまれば取得可能と取得要件が緩和されました。(出典:厚生労働省 育児・介護休業法 改正ポイントのご案内)
育休を取ろうと思ったきっかけは?
(江部)そもそも長峯さんが育休を取ろうと思ったきっかけを教えてください。
(長峯)最初に妻が妊娠したと聞いたときは、取得を考えていませんでした。仕事が忙しかったし、育児は仕事から帰ったら手伝おうと思っていたので。でもこの「手伝う」という言葉がまるで他人事のような発言だと妻に指摘されて……。それで一転、妻と二人で子育てしようと育休取得へ動き出しました。
(江部)たしかに、「手伝う」という言葉に他人事感が出ちゃっていますね。
(長峯)せっかく育休制度があるのだから、自分も育児に真剣に向き合おうと心に決めました。少し忙しすぎたので休みをとりたかったっていうのもあったけど、一番は自分の他人事姿勢に気が付いたことがきっかけです。
半年間の育休取得に至った背景は?
(江部)長峯さんが育休を半年間取ろうと思った決め手を教えてください。
(長峯)子供が一歳になるまでの約1年という期間を前提に考えました。育児休業は給料が出ない代わりに、育児休業の給付金が出ます。育休を取得して最初の半年間は額面給与の2/3の給付金がでますが、それ以降は1/2に。主体的に育児参加できることと金銭面を考えて、給付金がたくさんもらえる半年間は休もうと決めました。
(江部)なるほど。給付金の制度を考えて半年に決めたのですね。もう少し期間を延ばすことは考えませんでしたか?
(長峯)そうですね。もう少し取りたかったけど、半年以降は給付金が半分になってしまいます。育児はお金もかかるので、半年間の取得は家計のことを考えると丁度良い期間だったと思います。ただ子供と一緒にいる時間は楽しいので戻る選択もあります。給付金も少し出るので。
(江部)育休を取ると今の生活水準から下がることになりますが、その点夫婦でどのように話をしましたか?
(長峯)子育ての時間はお金で買えないよね、と妻と話しました。お金が足りなければ借りれば済む話なので、なんとかなると思っていました。実際借りなくてもなんとかなりました。
上司の反応は?
(江部)上司の反応はどんな感じでしたか?
(長峯)かなりびっくりされていましたね。「長峯が休むの?!」って。他の男性社員が育休をとっていなかったので、よけいに驚かせてしまったと思います。
(江部)世間もようやく男性育休を推進しはじめた時でしたからね。しかも6カ月という長めのお休みですし。予定どおりに取得できましたか?
(長峯)「1ヶ月遅くできないか?」など言われましたが、そこは折れていただき当初の予定通りに取得できました。
(江部)どのように段取りをしたのですか?
(長峯)出産日が5月下旬で、実際相談したのは年明けでした。6月末まで仕事がありましたが、プロジェクトの完了日が7月以降になる仕事は自分が担当にならないように上司と相談しました。
(江部)なるべく早く上司に相談した方がいですね。
(長峯)そうですね。取得する半年前から相談すると上司も配慮もしやすいと思います。妊娠が4~5か月をすぎたら育休を考えてみてください。
【上司の反応】部下の育休取得を経て
ここまで育休を取得した側の経験をお伝えしましたが育休を受け入れる側はどのような心持ちで育休期間を過ごしたのでしょうか?半年間の育休を取得した長峯の直属の上司に、部下から育休を取得したいと申告された際の気持ちや、部下の休業期間を乗り越えた方法を振り返ってもらいました。
半年の育休取得を申告されたとき、どう思ったか?
「えーっ!」という衝撃しかありませんでした。それは半年という期間と課長が取るという二つの面での衝撃だったかと。それと同時に期間短縮の打診はした記憶があります。
取得を認めないという選択肢はなかったので、本人はもちろん他のメンバーのためにも「迷惑を掛けるわけにいかない」というプレッシャーしかありませんでした。
部下の休業中どう乗り越えたのか?
取得期間中はマンパワー不足に陥ることが十分に予測できていたので、臨時の採用活動を行いました。しかし適当な人材を見つけることが出来ませんでした。
そのため新規の案件については、パートナー企業と連携して乗り越えるしかないと開きなおり、まず既存の進行中案件と中断案件の動き出し時の担当割振りを事前に本人にやってもらいました。そのあとは、受注確度別での業務整理や協力パートナーへの依頼拡大と、ひたすら調整していました。
復職時の印象や上司からみた復帰前と後での働き方の変化などあるか?
復職後はしばらくはペースをつかむのが難しそうに見えました。
育休期間が終了しても育児が終わったわけではないので、効率的な仕事の仕方や時間配分などについてかなり意識をしながら働いていると感じています。
育休取得後
育休中の過ごし方は?
(江部)育休中はどのように過ごしていましたか?
(長峯)初めての育児で妻と二人あたふたしながらも、振り返ると穏やかな生活を送っていました。朝起きて散歩した後は朝ごはんの準備。食器やテーブルを片付けたらお昼寝して、子供が起きたらお散歩。お散歩のついでに買い物して、夜はテレビを観ながら洗濯物にとりかかるといった感じです。後半から妻と子供と僕の中で、だんだんルーティンが決まってきました。
(江部)大変だったことはありましたか?
(長峯)子供って眠たそうなのに意外と寝ないので、寝かしつけにはとくに苦労しました。泣き声もダメージが大きくてつらい時がありましたね。
あと僕は育児で腰が痛くなり、妻は手首が痛くてフライパン持つのが辛くなるなど身体的にもダメージがありました。
(江部)大変ですね……。奥さんとの関係に変化はありましたか?
(長峯)妻とふたりで話せる時間が増えて仲良くなれたかな。子供を寝かしつけたら大人たちの時間なので、家族の時間がたっぷりとれて本当に良かったです。
育休中に仕事の連絡はあったか?
(江部)育休中といっても、会社から連絡が来ることもあったのではないですか?
(長峯)会社の携帯は持っていましたが、そもそも立ち上げなかったです。上司から6月と12月末に2回チャットが来たのを確認した程度で、ありがたいことに連絡はほぼありませんでした。
(江部)部下から案件の相談もなかったのですか?
(長峯)なかったですね。
(江部)仕事の引継ぎがスムーズだったのですね。
(長峯)いや、案件の引き継ぎ調整は下手でした。ただOutlookを利用した自動応答メールを設定することはしました。会社も私が育休を取ることを社内にアナウンスしてくれたり、私の上司が部下をオペレーションしてくださったりと、周りのフォローのお蔭で育児に専念することができました。
育休中の金銭事情について
(江部)育休中のお金事情は誰もが気になると思うのですが、実際どのような形でお金が支給されましたか?
(長峯)育休は、会社から自治体に「取得者が出勤していない・働いていない」と証明して初めて承認されます。その承認が下りるまで時間がかかるので、初回の給付金が入ったのは育児休業から3ヶ月後でした。なのである程度の蓄えは必要でした。
(江部)育休を取得して給付金が入るまでの3ヶ月間は、どのようにお金を管理していましたか?
(長峯)承認待ちの3ヶ月の間に、3ヶ月分の家賃と社会保険料や光熱費などの支払いがあったので、貯蓄から捻出しました。初回は2ヶ月分がまとめて振り込まれ、2回目の支給は早かったので普通に過ごせましたが、3回目はまた少し間が空きました。普段は会社給与から天引きされている住民税を、自分で直接自治体に支払うことになるので、思っていたより手元のお金が必要でしたね。育休期間が2週間だったとしても、給付金支給まで時間がかかると思います。
育休を取得してよかったことは?
(江部)育休を取得してよかったことを教えてください
(長峯)子供が日々成長する姿を妻と2人で見守れたことです。とても幸せでしたし、楽しかったです。
(江部)半年間仕事を離れて感じたことはありますか?
(長峯)自分がいなくても職場が回るか不安でしたが、それは杞憂だったなと。会社は組織なので、誰かしらカバーできる人がいます。しかし家庭は自分がいなくなったらカバーするのは妻ひとり。家族のために働いていることを実感した半年間でした。
(江部)育休終了後の社内の反応はいかがでしたか?
(長峯)あたたかく迎え入れてくれて嬉しかったです。今までと変わらず案件が入ってきたので、案外すんなり育休前のペースに戻ることができました。ただ育休中に変更になった事業部や部方針などを理解するのに時間がかりました。
(江部)周りがしっかりとフォローすることが大切ですね。
復帰してから仕事と育児の両立は?
(江部)育休終了後も子育ては続きますが、復帰してからは仕事と子育ての両立はできていますか?
(長峯)正直、対顧客でフロントを持ちながらの子育ては難しいですね。急な連絡には対応ができないですし。フロントは他の人と切り分けたほうがよいのではないかなと個人的に思っています。
(江部)そこは会社としての対応が問われるところですね。どのようにして育児の時間を確保しているのでしょうか?
(長峯)できるだけ定時で帰宅できるように調整していますが、どうしてもお客様のご都合で週2~4時間は残業が発生します。妻とやり取りをして、どちらかが子供の面倒を見られるように調整しました。
(江部)子供は急に体調を崩すこともあるので大変ですよね。
(長峯)子供が保育園で病気をもらってきて、私と妻にうつってしまったことがありました。子供が発熱時の在宅勤務は絶対無理です!
「育休取得を迷っている男性」へメッセージ
(江部)最後に育休取得を迷っている男性にメッセージをお願いします!
(長峯)取りたいと思ったら迷わず取ったほうが後悔しません!育休を取らなかったら子供の寝顔しか見られませんし、そもそも早く帰るという意識は生まれなかったと思います。男性自身にとってもよい経験になるので、ぜひ育休を取っていただきたいです。
育児休業の取得は、出産日から1年が限度なので、その局面になったらしっかり社内規定を読んで確認してください!その範囲の中で希望を出してくださいね。
(江部)子供だけでなく自分たちも親として成長する期間ですね。ありがとうございました!
育休を取得しやすい環境にするためには?
座談会でのトークと上司へのインタビューを踏まえて、会社や社内の管理職者がどのような対応を取れば社員が育休を取得しやすくなるかを整理しました。
育休取得情報の提供
育休の制度や取得方法、給付金の手続き等の情報を提供し、社員が正確に制度を理解できるようになっているか、今一度確認してみましょう。さらに男女どちらの取得も想定した資料になっているとより親切です。
関係部門への連絡
社員から育休の取得意向を受けた際は、積極的にサポートする姿勢を示してください。さらに社員が育休を取得することを、社員の同僚や上司に周知しましょう。
バックアップ体制の構築
社員の育休取得期間中に発生する業務を滞らせないために、社員の同僚や上司、チームメンバーに、その期間における業務の調整やサポートを依頼します。代替担当者や緊急連絡先などを明確にしておくなど、急な業務対応や問題発生時に対応できる体制を整えましょう。
復帰支援
育休明け直後は社員の負担を考えて、一度に全ての業務を再開するのではなく、段階的な復帰を検討するとよいでしょう。社員の働き方や業務に対する適応度を定期的にフォローアップするとスムーズに業務に復帰できます。
育休体験の共有
育休を取得した男性社員の体験や成果を共有すると、他の社員も育休取得へのモチベーションを高めることができます。
最後に
今回は半年間の育休を取得した新米パパ社員に話を聞きました。私たちの組織では初の男性育休取得社員であり、しかも半年という取得期間。社員も興味津々の様子でした。上司の立場では、業務フローの見直しやパートナー企業との連携などによりこの半年を乗り越えたとのことでした。この記事が皆様のお役に立てば幸いです。
今後もリリカラの取組を発信してまいりますので、少しでも興味を持っていただけると嬉しいです。
『働く場所・社会を・もっとサステナブルに』
最後までお読みいただきありがとうございました!
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