小規模なオフィスは、「必要なエリアを確保できるのか?」「家具だけでいっぱいになるのでは?」など、オフィス面積が小さいゆえの不安があるのではないでしょうか?
そこで本コラムでは、従業員数30名前後の小規模オフィスならではのメリット・デメリットとレイアウトのポイントをご紹介していきます。

最新のオフィスデザインを 視覚的・直感的に捉え、”見る”だけで、これからのオフィスのヒントが得られる一冊です。
目次
小規模オフィスのメリット・デメリット
小規模オフィスのレイアウトを考える際、小規模ならではのメリットを活かすことが大切です。大規模オフィスとは異なる、小規模・少人数オフィスならではの利点を解説します。
小規模オフィスのメリット① 自由度が高い
小規模でコンパクトなオフィスは、社員の意見をレイアウトに反映しやすいことが特徴です。大規模なオフィスに比べて、社員一人一人の要望を取り入れた柔軟な空間づくりが可能になり、結果として社員のモチベーションや生産性向上にもつながります。
小規模オフィスのメリット② デザインを統一しやすい
家具や内装デザインのイメージを統一しやすい点も小規模オフィスならではのメリットです。統一感のあるオフィスは企業イメージの向上に寄与し、そこで働く社員のエンゲージメントや一体感を高めるインナーブランディング効果も期待できます。また、来社されるお客様に対して自社の魅力をアピールする場ともなり、優秀な人材確保にも繋がります。
【 オフィスの豆知識 】インナーブランディングとは
インナーブランディングの目的は、社員と企業の想いを同じ方向に向けることであり、社員が企業の思いを理解・共感することでエンゲージメント向上に繋がります。リモートワークの普及で帰属意識低下が囁かれている今、オフィスデザインを通して企業文化やビジョンをメッセージとして社員に伝えて価値観を共有することがとても重要です。
小規模オフィスのメリット③ コストを抑えられる
あらゆるコストを抑えることができる点もメリットの一つです。賃料が抑えられることはもちろんのこと、人数が少ないため準備しなければならないオフォス家具・備品類も比較的少量で済みます。また、工事範囲もコンパクトだからこそ、オフィス構築に関わる各種工事やビル設備の工事などの費用を抑えることができます。
小規模オフィスのデメリット
上述したメリットがある一方、デメリットもあります。
小規模なオフィスだからこそ設置する家具の大きさやレイアウトを工夫しなければ、窮屈さや圧迫感を感じる空間になってしまいます。また、人によっては「プライバシーがなく気が休まらない」「見られている感がある」と感じてしまうかもしれません。会議室もスペース的に多くは確保できないため、使いたいときに使えないなどのトラブルも考えられます。
限られた空間の中ですべての要望を叶えることは難しいですが、上記のようなネガティブな印象を与えないためにも、優先度を決めて空間に取り入れていくことが大切です。
◎デメリットを解消するポイント
「何を優先させるか」を見極めるための事前調査が非常に大切です。アンケートやヒアリングを通して社員の意見を吸い上げ、レイアウト要件を整理するまでに優先順位を明確にしておきましょう!
レイアウトの検討に必要な情報
オフィスのレイアウトを考える際には、どのような働き方を実現したいかを明確にすることが重要です。どうすれば効率よく業務に取り組むことができるか、情報を整理したうえで、レイアウトの方向性を決めていきましょう。
曖昧な情報でレイアウトを決めてしまうと、業務に適さず、作業効率が落ちてしまう可能性もあります。最適なオフィス環境を実現するために、まずは以下の情報を整理しておきましょう。
- オフィス面積
- 従業員数と部門構成
- 各部署の業務内容や特性
- 必要な収納量

小規模オフィスにおけるゾーニングのポイント
小規模オフィスのレイアウトを考える際は、まずゾーニングを意識することが重要です。限られたスペースの中で快適かつ効率的に働ける環境をつくるために、適切なエリア配分やゾーニングのポイントを押さえておきましょう。
① 一人あたりの面積
ある調査(※)によると、一人あたりのオフィス面積は9.77㎡(約3坪)、執務席における一人あたりの面積は6.16㎡(約1.9坪)とされています。どちらも増加傾向にあり、ハイブリッドワークが普及する中で、オフィスは単なる作業スペースではなく、快適で広々とした環境が求められるようになっています。小規模なオフィスにおいても、なるべく広く作業ができるように導入する家具にこだわるなど、工夫が必要です。
※ITOKI「WORKPLACE DATA BOOK」(株式会社イトーキのページに遷移します)
② 適切なエリア配分とゾーニング

一般的なオフィスでは、用途ごとに適切なスペース配分を行うことが重要です。小規模オフィスにおいても、快適な作業環境を維持するために、以下のような割合を参考にレイアウトを検討するとよいでしょう。
執務スペース(デスク・ワークエリア):50〜60%
一人あたりの執務席面積を6.16㎡(約1.9坪)とすると、執務スペースは全体の半分以上を占めることが一般的です。
会議・打ち合わせスペース:10〜20%
限られたスペースの中で打ち合わせスペースを確保するために、執務と打ち合わせを兼ねられるように工夫することがおすすめです。必要に応じてワークブースを導入することも手段の一つです。
▶ ダウンロード資料|ワークブース比較表
共用スペース(受付・休憩エリア・リフレッシュスペース):10〜15%
社員のリラックスや来客対応のためのスペースとなる「共用スペース」ですが、小規模オフィスにおいては、効率的なレイアウトを意識し、コンパクトにまとめることが求められます。ただし、必要に応じて会議・打ち合わせもできるようにするなど、小規模ならではの工夫も必要です。
収納・ファイリングスペース:5〜10%
ペーパーレス化が進む中で書類の収納スペースは減少傾向にありますが、最低限のスペース確保が必要です。なるべくデッドスペースを活用するようにしましょう。
動線・その他(通路・設備エリア):5〜10%
執務スペース、共有スペースなど必要なエリアを配分していく中で、忘れてはならないのが通路となる動線スペースです。限られたスペースではありますが、少なくとも人ひとりが通行できる600mmの通路幅は確保するように設計しましょう。
③ 社員の声を反映
社員が日ごろ感じているオフィスの課題をヒアリングし、改善策をオフィスに取り入れることで社員の満足度向上に繋がります。「この部門とは近い方が効率が良い」「会議スペースを増やしてほしい」「リフレッシュできる場所が欲しい」など、社員の要望を汲み取りレイアウトを検討することが大切です。
小規模オフィスのレイアウト注意点
小規模オフィスのレイアウトを考える際は、スペースを有効活用しながら、働きやすさや将来の変化にも対応できる工夫が求められます。本章では、レイアウト設計時に注意すべきポイントについて解説します。
圧迫感のないパーティションを採用
小規模なオフィスにおいて、背の高いパーティションで空間を仕切ってしまうと圧迫感につながってしまいます。窮屈な空間は精神的なストレスにも影響するため、可能な限り空間を仕切らずにオープンで開放的なオフィスにすることがおすすめです。ただ、どうしてもパーティションを設置したい場合は背の低いものや、透け感のあるものやデザイン性のある製品を選び、「圧迫感」を軽減しましょう。
音に配慮する
小規模なオフィスでは、音が空間全体に届きやすいため、話し声や会議の様子が気になり、集中力が低下する恐れがあります。そのため、会議・打ち合わせエリアはできるだけ執務エリアから離れた場所に配置することが効果的です。また、遮音性の高いweb会議ブースを導入するなど、音の問題に配慮することで、快適で集中できる作業環境を整えることも重要です。

将来的な増員も考慮する
社員数の増減に柔軟に対応できるオフィスレイアウトの設計は非常に重要です。増員によるスペース不足は、移転や大規模な改修を必要とする場合があり、新たなコストを生む可能性があります。そのため、事前に増員を見越した準備を進めることが求められます。具体的には、「休憩・リフレッシュと打ち合わせを兼用で使えるエリアをつくる」や「クラウドサービスを導入し、書類などの収納スペースを削減する」など将来的な変化に対応できる対策を推進することがポイントです。
パターン別|小規模オフィスに適したレイアウト
内勤社員が多い場合:「対向型(島型)レイアウト」

対向型(島型)レイアウトは、複数のデスクを向かい合わせに配置し、グループ単位で一つの「島」を形成するレイアウトです。スペース効率がよく、かつ社員同士のコミュニケーションが取りやすいレイアウトであるため、チーム全体の生産性向上にもつながります。業務上、打ち合わせが多い場合は、クイックにミーティングができる場も確保しておきましょう。
対向型レイアウトのオフィス事例|鈴茂器工株式会社
メリット | デメリット |
・コミュニケーションが活発になる ・視覚的な一体感がある ・スペース効率が良い ・チーム編成の変更にも柔軟に対応できる | ・作業中の視線や会話が気になりやすい ・集中力が削がれる可能性がある ・一体感はあるが、個人のスペースが狭く感じられる |
外勤社員が多い場合:「自由型(フリーアドレス式)レイアウト」

自由型(フリーアドレス式)レイアウトは、固定席を設けず必要最低限の座席数(ワークポイント)を設けるレイアウトです。社員すべての座席を用意する必要がないのでスペース効率もよく、特に外勤社員が多い場合に適しています。ただし、個人ロッカーなど荷物を収納するスペースが別途必要になるため注意が必要です。
自由型レイアウトのオフィス事例|エプソン販売株式会社
メリット | デメリット |
・出社率を考慮し、必要最低限の席数で運用可能 ・チームや部署を越えた交流が増える ・作業スタイルや気分に応じて座席を選べる | ・人気の席を確保できない場合がある ・個人の持ち物や資料の管理が難しくなる ・席の利用や管理にデジタルツールが必要 |
来客が多い場合
企業の印象を決定づけるエントランスや待合スペース、来客用ミーティングスペースの配置を工夫することが非常に重要です。
受付・エントランス
エントランスは企業の「顔」であり、ブランディングに大きな影響を与えます。企業のイメージを表現するデザイン性・快適性が求められ、近年では採用を意識しエントランスの内装にこだわる企業も増えてきています。
待合スペース
来客者がリラックスできるように、座り心地の良い椅子や内装デザインを取り入れ、ホスピタリティを表現します。
会議室・打ち合わせスペース
柔軟なレイアウトで効率的に使えるように配慮し、可変性のある仕切りやキャスター付きのテーブルを導入することをおすすめします。また、エントランスから会議室までの動線にも考慮する必要があります。
【100坪前後】小規模オフィスのレイアウト事例
リリカラ株式会社が手掛けたオフィスレイアウト事例をご紹介します。
約38坪・22名のオフィス事例|株式会社ユニフルーティージャパン
果物加工場が併設された工場事務所が気分が高まるリフレッシュな空間へと生まれ変わったリニューアル事例です。ポイントは以下の通りです。
● 限られた空間の中に、5種類の席を用意することで自由な働き方を叶えた
● フラットで掃除がしやすいフロアタイルを採用し、清潔さをキープ
● 家具メーカーのショールームを見学し、採用する家具のイメージを共有しながら最新トレンドを取り入れた

約38坪・22名のオフィス事例|株式会社ユニフルーティージャパン
約150坪・40名のオフィス事例|日産専用船株式会社
社員数と働き方(出社と在宅勤務のハイブリット)に合ったオフィスにするため、床面積を縮小した別フロアへの移転プロジェクト事例です。ポイントは以下の通りです。
● インテリアは「遊び心」を意識。執務エリアは業務内容や「場」の目的に合わせ8種類の床材を張り分けゾーニング
● ミーティングスペースやブース席、コミュニケーションスペースなど目的や多様な働き方に合わせたスペースを用意

約150坪・40名のオフィス事例|日産専用船株式会社
約50坪・21名|リリカラ株式会社 大阪オフィス
自由な働き方と事業間のシナジー創出を目指したオフィスリニューアル事例です。ポイントは以下の通りです。
● ショールームであることを意識し、通り沿いで目に留まるデザイン性とリリカラらしさのある親しみやすい空間
● 自社プロダクトを活用した内装デザイン
● 新しい働き方への挑戦と最新家具の導入

約50坪・21名のオフィス事例|リリカラ株式会社 大阪オフィス
まとめ:小規模オフィスでもおしゃれなデザインを!
今回は小規模オフィスにおけるデザインのポイントと企業事例をご紹介しました。小規模オフィスデザインにおいては、企業の文化や価値観を反映させることが重要であり、社員のモチベーションや生産性向上にはオフィスのデザインが一つの鍵となります。
リリカラでは、レイアウトやデザインの工夫を通して小規模オフィスながらも魅力的なオフィスづくりをサポートします。ご検討中の方はぜひお気軽にご相談ください!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
