ここ数年のコロナ禍により、リモートワークやテレワーク等の多様な働き方が昨今の常識となりました。しかしそのような状況だからこそ、オフィスの存在意義が問われています。
オフィスは本来、さまざまな価値を生み出せる場所である一方で、しっかりとデザインしないとその価値は半減してしまいます。
オフィスデザインの鍵となるのは「コンセプト」。確固としたコンセプトを創造することで、唯一無二の魅力的なオフィスをつくることが可能になります。
本記事では、オフィスづくりのポイントをはじめ、なぜオフィスデザインにコンセプトが必要なのかについて、そもそもオフィスはどのような効果を生み出す場であるかについて詳しく解説。
54年にわたってオフィスデザインを考え続けてきたリリカラだからこそ分かる独自の目線で、施工事例を交えつつオフィスデザインにおけるコンセプトの重要性をお教えします!自社のオフィスデザインを検討中の方は、コンセプトについてしっかり検討し、オフィスの価値を最大化しましょう。
目次
オフィスがもたらす4つの効果と事例
オフィスに出社しないリモートワークやテレワークが新しい働き方となっていますが、それらでは得られない効果・メリットがオフィスワークにはあります。
まず、オフィスが会社にどのような価値をもたらす場であるかについて、詳しく見ていきましょう。
社員の能力を引き出す
オフィスは、そこで働く社員の能力を引き出す場です。集中して仕事ができることはもちろん、オフィスに行くことで、仕事上かかわりのない部署の社員とも顔を合わせてコミュニケーションが取れます。そこから、家で仕事をしているだけでは得られなかった新しいアイデアが生まれる可能性が。
また他の社員の仕事ぶりを見てモチベーションが高まりやすいのも、オフィスがもたらす効果の一つです。
チームの一体感が高まる
オフィスで働くことで、チームの一体感が高まりやすいというメリットがあります。リモートワークでもしっかりコミュニケーションがとれていれば一体感は高まりますが、「フェイスtoフェイス」のコミュニケーションが取れるオフィスはよりその効果が期待できます。
さらに会社の雰囲気やカルチャーを肌で感じることができるので「自分はこの会社・チームの一員である」という意識が高まるでしょう。
ブランディングの発信・醸成
オフィスは、社外ブランディングと社内ブランディング、二つのブランディングの発信や醸成に効果があります。
オフィスは会社のビジョンを具現化する場所であるため、社外に対して「自分たちはこういう会社だ」ということを視覚的にアピールできます。
社外の人がオフィスに抱く印象はそのまま会社の印象につながるため、素敵なオフィスは素敵な会社とイコールになり、最先端なオフィスには最先端な会社という印象が。細部にまでこだわっているオフィスは、その会社が生み出す商品にもこだわりがあるように見えるはず。
そしてオフィスを通して、社員を大切にしていることが伝わると、顧客も大事にしてくれそうという印象を持つでしょう。
とくにベンチャー企業など会社としての歴史が浅く、世間的にブランドが浸透していない会社にとって効果的です。
社内ブランディングでは、社員がオフィスに抱く印象が働くモチベーションや不満に直結します。
社員が「素敵なオフィスで働いている」という誇りが持てれば、愛社精神が高まり仕事へのモチベーションつながります。しかしオフィスに対して不満があると、その不満は自社 への評価や不満となり、社員から取引先に伝わってしまうと、結果的に会社の損失につながってしまうでしょう。
社員同士のつながりの強化
オフィスは社員同士の連携やつながりを強化する効果があります。リモートワークだと社員間での雑談が生まれにくくなったり、心の機微も見づらくなったりします。 また仕事上で困っていても、チャットやテレビ会議の画面からでは上手に助け合えないこともあります。
しかし周囲に人がいるオフィスは、すぐに支援行為を受けることができ、社員同士のつながりもより強固になります。また雑談を通してその人の人となりを知ることができ、より親密なつながりを持てるようになるはずです。
オフィスにコンセプトを与える重要性
ではなぜオフィスにコンセプトを与えるべきなのでしょうか。
コンセプトとは、終始一貫してぶれることのない基本的な方向性のこと。オフィスを使う社員にコンセプトを共有すると、一致団結が促されて社員同士の結束感が高まります。さらにコンセプトをオフィスをつくる人・見る人にも共有すると、会社の方向性や魅力を伝える言語のような働きを担ってくれます。
またオフィスデザインのコンセプトを考えるということは、これまでの会社の価値観を整理したり、これからの会社としての歩み方を考えることにつながります。
結果として他社には無いオリジナリティのあるオフィスが創造でき、会社のブランディングとしても役立ちます。
一方コンセプトを考えずにオフィスデザインをしてしまうと、どのような会社(オフィス)を作りたいのかというビジョンが見えにくくなり、上で紹介した4つの効果が薄れてしまうこともあります。
コンセプトづくりのポイント
ではオフィスデザインのコンセプトはどのように考えたらよいのでしょうか?ここではコンセプトの決め方のポイントを解説していきます。
今のオフィスの良い点と悪い点を整理する
まずは今のオフィスの良いところと悪い(要改善)ところを探してください。例えば立地はいいが窓が少なく明るさが足りない、執務室以外にリフレッシュスペースが欲しい、ミーティングスペースが狭いなど……。
リリカラでは、実際にそこで働いている人の声から導いた、オフィスのポイントを整理してコンセプトを作成。移転先の特徴を踏まえたうえで、今の働き方と今後の理想の働き方から「こうした方がいい」というポイントをキーワード化してコンセプトに落とし込みます。
イメージは「処方箋」。
今のオフィスをより良くするためにはどのような改善策が有効か考えます。そしてコンセプトが企業様に刺さるかを見極めて、デザインをご提案させていただきます。
どのような働き方を実現させたいか考える
新しいオフィスで、社員にどのような働き方をして欲しいのかしっかり考えることも大切です。社員の「オフィスに行きたくない」という気持ちは、「会社を辞めたい」という思いにつながりがち。
まずはオフィスに行く目的や、行くことで得られるメリットを明確にすることが必要と考えます。
前項で出た今のオフィスに対する不満を踏まえ、どんなオフィスで働きたいかを実際に働いている社員に聞いてみてください。「社内外の人とコミュニケーションが取りやすいオフィス」や「その日の気分によってフレキシブルに働く場所を選べるオフィス」など、さまざまな意見が出るはずです。
オフィスデザインに社員の意見を反映させると、社員もオフィスに対して愛着がわき、大事に利用したくなるでしょう。
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会社らしさを反映させる
オフィスデザインをする上では、その会社らしさを反映させることがポイントです。経営方針やスローガンといった会社の方向性をベースに、現場での希望する働き方や社員の姿を重ね合わせ、取扱商品などを掛け合わせてその会社にしかないコンセプトを創造します。
リリカラでは、採用情報・IR情報・決算短信・中長期計画などを確認し、その会社がどのような方向に向かっているかを参考にしています。それらのデータは今のオフィスの状況や社員の働き方だけではなく、これからの企業の目指す姿や取り組み についても分かるためです。
中には新しいオフィスで実現させたいことや、デザインイメージが湧かない会社もある一方で方向性が明確な会社もあります。そのような会社に対してはインパクトに偏ることなく、方向性に寄り添ってコンセプトをつくるといいでしょう。自然体なイメージで作ったコンセプトは、覚えやすいといったメリットもあります。
リリカラのオフィスコンセプト事例
リリカラでは、上記のポイントを押さえながらコンセプトをお作りします。
他の会社はどのようなコンセプトのオフィスを作っているのでしょうか。ここではリリカラが手掛けた3つの事例をご紹介します。
未来の働き方と会社の成長を掛け合わせたコンセプト
某食品メーカー様の施工事例です。テレワークの急速な増加に伴い、フレキシブルな働き方に対応するため、フリーアドレス導入とオフィスのリニューアルを行いました。同時に、出社した社員の「集中したい」「リラックスしたい」といったニーズに対応できるスペースを設けて、自律的な働き方をサポートするオフィスに生まれ変わりました。
こちらのオフィスデザインのコンセプトは「FARM」。オフィスを社員同士のコミュニケーションを耕す場所、そして新しい発想やコラボレーションを生み出す場所をFARM(畑)としました。ウェブ会議などを行うワークスペースは「GROW LOUNGE」と名付け、他にも「Sunny」や「Leaf」といった、成長する姿を想像させる場の名称も採用。
食品メーカーということで、食物を育て収穫する畑にちなみ、未来の働き方や企業の生産性(成長)も創造できるようにという想いをコンセプトに乗せました。
デザイン事例:
ニューノーマルな働き方へ挑戦し、ワーカーのつながりを強化する
社員の能力を刺激するコンセプト
こちらの施工事例のオフィスコンセプトは「GROW UP FIELD」。ともにつながり個々の成長を促すオフィスとして、空間の価値を見直し、自由度とモチベーションの向上を目指しました。
社内のコミュニティ形成に打ち合わせが欠かせないということで、同じ場所で行っていた打ち合わせを、多様にデザインされたスペースで時間を気にせず行えるように変更。それによって、より有意義にミーティングができる日常へとチェンジしました。
働き方に合わせて席を選べるフリーアドレスの導入や窓際に面したカウンター席、少人数のソファブレストエリアや大人数でも利用可能な可変式のミーティング席などを新たに設置。文字通り「GROW UP」したオフィス空間に生まれ変わりました。
デザイン事例:
つながりと成長を促すオフィス‐「GROW UP FIELD」サステナブルなマテリアルにより有機的なオフィス空間へ
企業アイデンティティに真摯に寄り添ったコンセプト
コロナ禍においてなお社員が安心して出社でき、ゆとりや心地よさを感じられるオフィスにするためオフィスの増床及びリニューアルを実施。今回のプロジェクトでは「ここに集うすべての皆様のための空間」をコンセプトに、顧客の意見をもとに企業アイデンティティを表現する空間づくりを目指しました。
増床したエリアにはオープンなワークスペースやミーティングスペース、ミニキッチンなどを新設し、スタッフ同士の交流はもちろんのこと、オフィスを訪れたお客様へのおもてなしも可能な空間に仕上げました。
デザイン事例:
心地よさと企業アイデンティティが感じられるホスピタリティ高い空間
まとめ|コンセプトとはオフィスの「処方箋」
オフィスをデザインする上でコンセプトを設定することは、オフィスの価値を高めるためにとても重要です。オフィスには、今以上に社員の能力を引き出したり、チームの一体感を高め社員同士のつながりを強化したりする役割があります。また会社のビジョンを具現化することで、ブランディングの発信・醸成するという役割も。
オフィスのコンセプトを生み出すには、現在のオフィスの良い点・悪い点を整理し、社員にどのような働き方を実現させたいかよく検討しましょう。そのうえで会社らしさを反映させると、価値の高いオリジナリティのあるオフィスが作り出せます。
人や売り上げ、会社規模などは時代とともに変化していきます。その変化と同様に、コンセプトも変化させていくべきだと考えます。リリカラでは「はたらくをもっとゆたかに」をコンセプトとし、会社の問題解決に向けたオフィスデザインサービスを提供。企業の成長と個々の成長を支えます。新しいオフィスづくりにお悩みの際は、ぜひリリカラまでご相談ください。

クリエイティブディレクター
長峯 修平 Shyuhei Nagamine
2008年リリカラに入社し、14年間設計としてオフィスをメインとした空間構築に携わる。ヒアリング・プレゼンテーション・打合せといったお客様とのコミュニケーションや関係性を重視したプロジェクト進行を行い、現在は管理職として部下の案件のディレクション業務も担当する。