女性が働きやすい環境づくりは、女性社員だけでなく、男性社員や企業全体にも大きなメリットをもたらします。出産・育児といったライフイベントに寄り添った制度や、多様な働き方を支える柔軟な仕組みは、すべての社員の満足度や生産性向上につながります。
経営者の方や担当者の方の中には、「女性社員の活躍をもっと後押ししたい」「働きやすさを高めて離職を防ぎたい」といった課題を抱えている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、女性社員が働きやすい職場とはどのようなものか、企業にもたらす具体的なメリット、そしてそれを実現するための制度やオフィスデザインの工夫についてご紹介します。制度と空間の両面からアプローチして、誰もが自分らしく働ける職場づくりを目指しましょう。
目次
女性が直面する労働環境の実態
近年、働き方改革やダイバーシティ推進の流れのなかで、女性の社会進出は確実に進んでいます。管理職や専門職として活躍する女性も増え、企業にとって欠かせない存在となっている一方で、いまだに働きにくさを感じている女性社員が少なくありません。
たとえば、育児や介護と仕事との両立、男女で異なるキャリアの捉え方、さらには職場の無意識のバイアスや配慮不足など、目に見えにくいハードルが存在しています。
実際、女性の離職理由として「職場の環境や人間関係」「育児との両立が難しい」といった声が多く挙がっており、能力がありながらも働き続けることを諦めざるを得ないケースも少なくありません。
企業が本当に多様な人材を活かすためには、制度や仕組みの整備と「日々の職場環境」そのものを見直すことが不可欠です。
SDGsの目標達成も!企業が女性活躍を推進することで得られるメリット
女性の社会進出推進や少子高齢化により、女性が働きやすい環境を作ることが重要になってきています。
ただし従来のオフィスは男性中心に設計されていることが多く、女性の声があまり反映されていませんでした。女性が働きやすい環境を整備することで、企業には以下のようなメリットがあります。
働く女性の満足度が上がる
1つ目は女性社員の満足度が高まる点が挙げられます。満足度は企業の生産性改善にも直結します。仕事にやりがいを持ち、高いモチベーションを維持して働くことができれば、その分パフォーマンスが良くなるので、生産性の向上が期待できるでしょう。
また、職場環境に満足している従業員が多いと、それだけ職場全体にも活気が生まれます。チーム一丸となって仕事に取り組む意識を作りやすくなり、全体の成果にも反映されるでしょう。そのほかコミュニケーションが活発になって、新たなアイデアなどが生まれやすくなることも期待できます。
男性にとっても快適なオフィスが実現する
「女性が働きやすい職場づくり」は、その多くが男性を含むすべての社員にとっても快適で働きやすい環境づくりにつながっています。
たとえば、清潔感のあるオフィス空間は、男女問わず多くの人にとって居心地がよく、集中力や仕事へのモチベーションを高める効果があります。衛生面や空気の質に配慮された職場は、結果として生産性や社員満足度を高める重要な要素です。
また、女性の登用や働きやすさに配慮する企業は、育児休暇や時短勤務、柔軟な働き方の整備といった「働き方改革」にも前向きな傾向があります。これらの制度は、家庭を持つ男性社員や、ワークライフバランスを重視するすべての社員にとっても大きなメリットとなります。
人材の流出を抑制できる
柔軟な働き方や育児・介護との両立支援など、女性が働きやすい環境を整えることで、女性はライフイベントに左右されることなくキャリアを継続しやすくなります。これにより、優秀な人材の離職を防ぎ、企業全体の定着率が高まります。
また、女性の活躍が進むことで社内に多様な視点が生まれ、組織の活性化にも寄与します。
SDGsの5と8の目標の達成・ESG投資における評価が高まる
女性が働きやすい環境を整えることは、持続可能な社会の実現に向けた取り組みとして、SDGsの達成にも貢献します。特に「ジェンダー平等を実現しよう(目標5)」や「働きがいも経済成長も(目標8)」に直結する施策として注目されており、企業の社会的責任の一環と捉えられます。
またこうした取り組みは、ESG投資の観点からも高く評価され、投資家からの信頼を得る要因となります。単に人材確保につながるだけでなく、企業価値やブランド力の向上にも寄与する点で、長期的な経営戦略としても非常に重要です。

女性が働きやすいオフィスの特徴
女性が働きやすいオフィスを作るには、以下の点に注目しましょう。これらを知ることで、より良いオフィス環境を作ることが可能です。
清潔な環境が整えられている
オフィスの清潔さは、働く人の快適さや安心感を支える基本的な要素です。デスク周りや共用スペースの整理整頓が行き届いていることはもちろん、トイレや給湯室といった衛生面に気を配るべきエリアが常にきれいに保たれていることが重要です。
また、社員が気軽に清潔を保てる仕組みづくりもポイントです。たとえば、掃除用具の常備や使用ルールの明文化、清掃チェックリストの導入などが有効です。さらに、外部の清掃業者と連携して定期的なメンテナンスを行うことで、常に清潔な状態を維持できます。
空調や臭いに配慮されている
女性が不満を抱きやすいのが、ニオイや空気です。
女性はタバコ臭に敏感な人も多いため、タバコのニオイは要注意です。分煙や禁煙にするのはもちろん、喫煙ルームの入り口に消臭スプレーを置いて喫煙者の方から気を配ってもらう、という取り組みをしている企業もあるので参考にしましょう。
また、近年では空気清浄機やアロマディフューザーを活用して、空気中のウイルス対策や気分をリフレッシュする工夫を取り入れる企業も増えています。こうした取り組みは、衛生面の向上だけでなく、集中力の維持やストレス軽減にもつながり、結果として業務パフォーマンスの向上にも寄与します。

トイレ・化粧室の設備が充実している
長時間オフィスで過ごす女性にとって、化粧室でのメイク直しや身だしなみのチェックは、仕事の合間に気分を切り替える大切なルーティンです。こうした日常的な行動を快適に行える環境が整っているかどうかは、実は働きやすさを左右する大きな要素です。
たとえば、明るく清潔な照明、鏡の配置、荷物を置けるカウンターや棚の有無などは、ちょっとしたことのようでいて利用者の満足度に直結します。また、アメニティの設置や音の配慮、パウダールームのような空間があると、「社員を大切にしている職場」という印象にもつながります。
単なる「トイレ」としてではなく、身支度やリフレッシュができる空間として化粧室のデザインを見直すことは、女性社員のエンゲージメントや快適な職場づくりに直結する視点です。

リフレッシュスペースや給湯室が充実している
働く女性にとって、食堂や休憩室、給湯室などのリフレッシュスペースの充実は、働きやすさに直結する重要な要素です。特に女性社員の中には、お弁当を持参し、外食をせずに社内でランチをとる方も多く、冷蔵庫や電子レンジなどの基本的な設備が整っていることは、日常の満足度を大きく左右します。
さらに、落ち着いてくつろげる空間があることで、気分転換がしやすくなり、リラックスして働ける環境づくりにもつながります。こうしたスペースは、女性に限らずすべての社員にとって、心身のリフレッシュや周囲とのコミュニケーションの場となり、生産性やエンゲージメント向上に寄与します。
近年では、リフレッシュスペースを単なる休憩場所としてだけでなく、「多様な社員との交流ができる情報交換の場」「自由な雰囲気でミーティングができ、アイデアが生まれる場」「書籍や資料に気軽に触れられる学びの場」として活用する企業も増えています。

プライベートに配慮した空間が用意されている
働く環境において、パーソナルスペースへの配慮は、女性社員の働きやすさを大きく左右します。一般的に女性は男性よりもパーソナルスペースに敏感だとされており、パーテーションや個人ブースがあることで、安心して業務に集中しやすくなる傾向があります。ただし、個人ブースがあまりに狭すぎると、かえって圧迫感を覚え、ストレスの原因となることもあるため、設計時には適度な広さや快適性を確保することが重要です。
また、心身の不調やストレスを感じたときに、一人で静かに過ごせる「カームダウンルーム」と呼ばれる空間があると、さらに安心感が増します。女性はホルモンバランスの影響などで体調の揺らぎを抱えることが多いため、短時間でもリセットできる場所があることで、心の余裕が生まれます。
こうしたプライベート空間は、女性だけでなくすべての社員にとって大切な存在です。誰もが自分のペースで働ける環境づくりは、働きやすさだけでなく、職場全体の生産性や定着率向上にもつながります。
妊婦の方が動きやすいレイアウトになっている
女性が働きやすい職場環境を整えるうえで、妊婦の方への配慮は非常に重要なポイントです。妊娠中も安心して働き続けられるようにするためには、オフィスの設備や働き方に工夫が必要です。たとえば、座面が広く体勢を変えやすいチェアの導入や、姿勢をサポートするクッションの設置により、身体への負担を軽減できます。また、お腹がデスクに当たっても衝撃を和らげるよう、角が丸いデスクを選ぶことも有効です。
さらに、社内で軽食や飲み物が購入できる仕組みがあれば、移動の負担も減らせます。こうした細やかな配慮は、会社の信頼性や人材定着率の向上にもつながります。
制度面で企業が整えるべきこと
この章では、女性がキャリアを中断せずに活躍し続けられるために企業が整えるべき制度について、出産・育児支援と柔軟な働き方という2つの視点から解説します。
出産・育児支援
出産や育児は、人生の大きなライフイベントであり、働く女性にとって大きな転換点でもあります。ここでは、産休・育休制度や復職支援など、出産・育児に関わるサポート制度について解説します。
産休・育休をサポートする制度の導入
女性は出産を迎えることでライフスタイルが大きく変わります。特に産休は、安心して出産に臨み、身体をしっかり休めるために欠かせない制度です。加えて、育児休暇や保育施設との連携など、産後の育児期間も含めて長く安心して働き続けられる環境を整えることが重要です。
一方で、「産休や育休が取りにくい」「職場の人間関係が悪く相談しづらい」といった問題がある職場では、仕事とプライベートの両立が難しくなってしまいます。だからこそ、企業は産休の取得しやすさをはじめとしたサポート体制や制度、福利厚生を充実させ、働きやすい職場づくりに取り組む必要があります。
産休・育休から復帰しやすい環境を整える
育児と仕事の両立が求められる中、産休・育休からの復帰に不安を感じる社員は少なくありません。そこで企業ができるサポートのひとつが、復帰後も安心して働ける制度や環境の整備です。代表的な制度には、「時短勤務」や「フォローアップ面談」があります。さらに、育休経験者とのネットワークづくりや、復職前に会社の情報を共有できる仕組みも、社員に安心感を与える有効な取り組みです。
リリカラでは、社内コミュニケーションの活性化を目的に、社内SNS「TUNAG(ツナグ)」を導入しています。このTUNAGによって、育休中でも社内の取り組みやニュースをリアルタイムで把握できるようになり、スムーズな職場復帰を実現できたという声もあります。
●育休中に「TUNAG」を利用したリリカラ社員の声
SNSのようにリラックスした状態で利用できるので、育休中でも負担なく会社の情報を確認できました。おかげで復帰後の浦島太郎状態が防げました。
産休・育休取得者以外の社員のフォロー体制の強化
産休や育休を取得する本人への支援はもちろん大切ですが、同時に周囲の社員へのフォローも欠かせません。育休取得者の業務を一時的にカバーする側が過度な負担を感じてしまうと、不満や疲弊が蓄積し、職場全体の士気やチームワークに悪影響を及ぼす可能性があります。
そのため、業務の分担やサポート体制をあらかじめ整え、スムーズに引き継げる仕組みを構築しておくことが大切です。また支える社員のために一時金を給付するなどの対策も有効です。
誰もが安心して休みを取得でき、支える側も前向きに働ける環境を整えましょう。
柔軟な働き方を支える制度
子育てや介護など、家庭と仕事を両立させる必要がある人にとっては、柔軟な制度の有無が働き続けられるかどうかを左右する要因になります。ここでは、フレックスタイムや在宅勤務、ABWなど、柔軟な働き方を支える制度について紹介します。
フレックスタイム制度
出産や子育て、介護などにより、フルタイムで働くことが難しくなった結果、離職を選択する女性も一定数います。それを防ぐには、短時間勤務制度やフレックスタイム制度といった、柔軟な働き方の導入が有効です。
「1日8時間、決まった時間に働く」という選択肢しかない企業の場合は、まずコアタイムを設けつつ、始業・終業の時間に柔軟性を持たせてみましょう。

在宅勤務やテレワークの導入
テレワークやハイブリッドワークなどの柔軟な働き方が選択できるように整備すると、通常の勤務が難しい女性社員への大きな助けとなります。人材戦略において採用候補者の幅が広がるため、企業内の女性活躍を推進しやすくなるでしょう。
在宅勤務の導入には、ICT設備や会議室の設置などオフィス環境整備も欠かせません。制度だけでなく、ハード面も並行して整える必要があります。

ABWの導入
ABW(Activity Based Working)とは、従業員がその日の仕事内容や予定に合わせて、働く場所・時間を自由に選択できる働き方です。ABWを導入することで仕事と家庭の両立がしやすくなります。
ABWを実現するには自宅やカフェ、サテライトオフィスなどで仕事ができる環境の整備と、オフィスのABW化を図ることが有効です。
具体的には集中ブースや防音ブースの設置、ラウンジやカフェスペースの導入など、オフィス内にさまざまなエリアを設け、従業員が働く場所を自由に選べるようにします。
これにより自分の選んだ場所で集中して仕事ができるため、生産性の向上や残業時間の削減といった効果が期待できます。

女性活躍を促進する取り組み
女性が自分らしく働き、能力を発揮できる職場を実現するには、制度や環境整備だけでなく、企業全体での意識改革や具体的な取り組みが欠かせません。この章では、女性活躍を推進するうえで効果的とされる取り組みをご紹介します。
アンコンシャス・バイアス研修を行う
アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)とは、性別や年齢、役職などに対して知らず知らずのうちに抱いている先入観や固定観念のことを指します。たとえば「女性は管理職に向いていない」といった考えが無意識に根付いていることがあります。
こうしたバイアスを可視化し、正しく理解するために有効なのが、全社員を対象とした研修の実施です。自らの思い込みに気づくことで、採用や評価、昇進などの場面でより公平な判断ができるようになります。
男性の育児休業を促進する
女性が活躍できる組織をつくるためには、男性の育児休業取得を当たり前にすることが大切です。育児は女性が担うものという固定観念が根強い職場では、女性だけに家事や育児の負担が集中し、キャリア形成の妨げとなってしまいます。
一方で、男性も育児に積極的に関わることができれば、家庭内の役割分担が見直され、女性が仕事と家庭を両立しやすくなります。また、職場全体で育児休業を取得しやすい雰囲気をつくることで、「周囲に迷惑がかかる」といった心理的ハードルも下がります。
男性の育児参加が進むことは、結果として性別にかかわらず誰もが柔軟に働ける環境づくりにつながります。

様々な働き方を選択できるようにする
ライフステージやライフスタイルに応じて「働き方を選べる環境」を整えることは非常に重要です。結婚、出産、育児、介護など、ライフイベントによって働き方のニーズは変化するためです。
たとえば、時短勤務やフレックスタイム、リモートワーク、週の勤務日数を調整できる制度などがあれば、女性は仕事と家庭の両立を無理なく続けることができます。
また、選択肢があることで「辞めるか続けるか」の二択ではなく、「どう働き続けるか」という前向きな判断ができるようになります。こうした柔軟な働き方の導入は、女性だけでなくすべての社員にとっても働きやすさを高め、組織全体の定着率や生産性向上にもつながります。
長時間労働よりも生産性に対して評価
女性が活躍できる組織を目指すには、働く時間の長さではなく「成果や生産性」で評価する姿勢が重要です。従来のように長時間働くことが高く評価される職場では、育児や介護など家庭との両立を求められる女性にとって、活躍のハードルが高くなります。
一方、限られた時間の中でも高い成果を上げる姿勢を正当に評価する仕組みがあれば、ライフスタイルに合わせた多様な働き方が実現できます。
時間ではなく成果を重視することで、女性だけでなくすべての従業員にとってフェアな環境が整い、生産性の高い組織づくりにもつながります。
女性が働きやすい環境の実現は、「制度」と「オフィスレイアウト」の整備が鍵
女性が働きやすい環境づくりは、制度面と職場空間の両方からのアプローチが欠かせません。柔軟な働き方を支える仕組みと、誰もが安心して働ける快適なオフィスデザインが両立することで、女性の活躍はもちろん、企業全体のパフォーマンス向上にもつながります。
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