執務室には業務遂行の場としての役割だけでなく、実は様々な役割があります。社員がより働きやすくコミュニケーションが取りやすい場にするためには、どのような執務室をデザインすればいいのでしょうか。
本記事では、執務室に求められる機能やレイアウトのポイント、家具の選び方などを事例をもとに詳しく解説していきます。最後には、リリカラが手掛けた執務室内のリフレッシュスペースや集中ブースの事例も紹介します。ぜひ参考になさってください。

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【掲載企業例】
エプソン販売株式会社、株式会社カプコン、ミネベアミツミ株式会社 など
目次
執務室(執務スペース)の役割
リモートワークの普及により、執務室には「オフィスならではの価値」が求められるようになりました。たとえば、自然な会話やアイデア共有、集中と交流の切り替え、そして企業文化を感じられる空間であることも、社員のモチベーションや帰属意識を高める大切な要素となります。
つまり執務室は、単なる業務の場ではなく、社員が組織とのつながりを実感できる拠点でもあります。こうした観点から、オフィスにおける執務室には次のような3つの役割があると考えられます。
業務遂行のための中核スペース
テレワークやリモートワークが浸透したとはいえ、業務遂行のための中核スペースであることには変わりはありません。社員が快適に効率よく作業を進められるように、十分な作業スペースや適切な動線を確保すべきです。十分に計算されたレイアウトや設計にすることで、社員のストレスを軽減し、生産性の向上が期待できます。
また集中して作業に取り組めるよう、ノイズ対策も重要です。
デスクの配置を工夫したり、パーティションや吸音材の使用によりノイズを軽減し、社員が集中して業務ができるような環境にしていきましょう。
より良い連携・コミュニケーションを生みだす場
執務室は、個人が業務に集中する場であると同時に、チームや部署を超えたコミュニケーションを育む場でもあります。そのためデスクスペースに加えて、下記のようなスペースや制度を導入する会社が増えています。
- オープンな共有エリア
- 開放的なカフェのようなスペース
- リモート会議用のブース・個室
- フリーアドレス制度
こうした工夫を取り入れることで、働く人が安心して交流でき、自然と新しいアイデアが生まれる場になっていきます。
会社のありたい姿を実現・実践する場
執務室は会社のありたい姿を実現・実践する場でもあります。企業としてのアイデンティティを反映したデザインは、社員はもちろん来社される方に向けても会社のありたい姿を印象付けます。
具体的には企業ロゴやコーポレートカラーの活用をはじめ、家具と内装デザインの統一、五感を意識した空間演出などが可能です。
さらにSDGsに配慮したデザインにすることで、企業の社会的責任を示す場にもなります。企業の持続可能性への意思を明確に伝え、社員の意識を高めることにもつながります。
これは社内外のブランドイメージの向上に役立つだけでなく、社員のエンゲージメントの向上や採用活動に貢献するだけでなく、より良い社会の実現に貢献する場となります。
執務室の座席配置例
執務室内の座席の配置方法には、対向型や並列型など様々な種類があります。ここでは6つの代表的な配置パターンをわかりやすく解説し、自社に合ったレイアウトを考えるきっかけにしてみてください。
項目 | 対向型 | 並列型 | 背面型 |
---|---|---|---|
イメージ画像 |
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特徴 | デスクを向かい合わせに配置するレイアウト | デスクを一方向に配置するレイアウト | デスクを背中合わせに配置するレイアウト |
対向型

特徴:デスクを向かい合わせに配置するレイアウト
並列型

特徴:デスクを一方向に配置するレイアウト
背面型

特徴:デスクを背中合わせに配置するレイアウト
項目 | 縦横型 | ブース型 | 自由型 |
---|---|---|---|
イメージ画像 |
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特徴 | デスクを縦や横や斜めに配置するレイアウト | デスクを独立した個別のブースに配置したレイアウト | 様々な席を1つの空間に用意したレイアウト |
縦横型

特徴:デスクを縦や横や斜めに配置するレイアウト
ブース型

特徴:デスクを独立した個別のブースに配置したレイアウト
自由型

特徴:様々な席を1つの空間に用意したレイアウト
個別のレイアウトについては、下記のコラムで詳しく解説しておりますので、ぜひご確認ください。

執務室のデザイン・レイアウトのポイント
執務室のデザインやレイアウトを決めるときには、次のようなポイントに気を付けましょう。
コンセプトを決める
オフィスのコンセプトに沿って執務室を設計すると、家具や内装、レイアウトに統一感が生まれ、社員が自然に企業のアイデンティティを感じられる空間になります。統一感のある環境は働きやすさにもつながり、集中力や生産性を高める効果も期待できます。
設計やデザインに先立って、会社としてのありたい姿や企業理念、取り入れたい働き方を反映したコンセプトを策定していきましょう。
トップダウンで決める以外にも、部署を横断したプロジェクトチームを立ち上げて、現状の課題や改善点などを明らかにしたうえで、コンセプトを作成する、ボトムアップでのコンセプト設計もおすすめです。

適切なデスクサイズを選ぶ
執務室のレイアウトを検討する際には、デスクの大きさを適切に選ぶことがポイントです。デスクのサイズは、作業のしやすさや効率に直結する重要な要素となります。
とはいえオフィスのスペースには限りがあるので、デスクサイズが大きければいいというものでもありません。下記の表を目安に、業務内容やオフィスのスペースに応じた適切なサイズを選ぶようにしましょう。
一般的なデスクサイズ | 幅1,000〜1,200mm×奥行600~800mm |
大きな書類を広げやすいデスクサイズ | 幅1,200mm以上×奥行600~800mm |
一般的なデスクサイズ
幅1,000mm〜1,200mm×奥行600~800mm
大きな書類を広げやすいデスクサイズ
幅1,200mm以上×奥行600~800mm

トレンドを意識する
執務室をデザインするときには、トレンドを意識するといいでしょう。
シンプルで無機質になりがちな執務室を、居心地の良い空間に変えられます。また執務室は、社内外の人に会社のイメージを伝えられる場所でもあるので、トレンドを意識したデザインは重要に。
最近のオフィストレンドとしては、フリーアドレスの導入やオープンスペースの活用、個室ブースの設置など、多様な働き方に対応できる空間づくりが重視されています。
さらに下記のようなデザインも最近のトレンドです。ぜひオフィスに取り入れてみてください。
- グリーンを効果的に配置したデザイン
- 自然光を取り入れやすいレイアウト
- 持ち込みできる物を設定する
- サステナビリティに配慮した照明器具やオフィス家具の導入
効率的な動線とレイアウトを考える
効率的な執務室をつくるには、社員がスムーズに移動できる動線設計が欠かせません。
通路幅は、下記の幅を確保するのが理想です。
一般的な通路幅 | 1,200mm以上 |
副通路 | 600mm程度 |
メイン通路 | 1,600mm以上 |
一般的な通路幅
1,200mm以上
副通路
600mm程度
メイン通路
1,600mm以上
効率的な動線やレイアウトを考える上では、社員の移動頻度や移動方向を分析することも大切です。頻繁に行き来する部署同士を近づけたり、ミーティングエリアなどの共用スペースを適切に配置することで、余計な移動を減らし、業務の効率を高めることができます。

執務室の環境づくりに適した家具を選ぶ
執務室の環境づくりのためには、オフィス家具選びが重要になります。どのような家具を選ぶかで、快適性や作業効率が変わってくるためです。
こちらではデスクと椅子の選び方についてご紹介するので、オフィス家具を選ぶ際の参考にしましょう。
デスク選びのポイント
デスクを選ぶときは、作業に十分な広さを確保できるサイズを選ぶことが大切です。具体的な寸法は業務内容によって異なるため、詳細は先ほどの「適切なデスクサイズを選ぶ」をご参考ください。
また、サイズだけでなく、デスクの機能性も選定時の重要なポイントとなります。
オフィスデスクには、移動しやすいキャスター付きや天板の高さを変えられる昇降デスク、人員の増減に対応可能なロングデスクなど様々な種類があります。
将来のレイアウト変更やスペース拡張なども見据えて、デスクの機能を選ぶようにしてください。
作業のしやすさに直結するのが、デスクの収納力や配線整理力。ごちゃつきがちな配線やケーブルを電源タップごと専用のケーブルボックスに収納できれば、デスク周りがスッキリ使えます。

椅子選びのポイント
オフィスチェアは疲れにくさを考慮して、極力身体に負担がかからないものを選ぶようにしましょう。
椅子の品質や機能性に問題があると、首や肩、腰などの疲労がたまりやすくなります。作業効率が悪くなるだけでなく、社員の健康に直接影響を与える可能性が高いので、人間工学に基づいた高性能の椅子を選んでください。
実際にオフィスチェアを選ぶ際には、ショールームなどで座って試してみるのがおすすめ。座面の高さや柔らかさ、背もたれの角度やアームレストの調整が可能かなどを、細かくチェックしてください。
とくにそれぞれの体形や好みに合わせて微調整できる機能があると、作業効率アップが期待できます。

自社に必要な機能の洗い出し
執務室を設計するうえで重要なのは、まず自社にとって必要な機能を明確にすることです。
たとえば、集中作業が多い部門がある場合は個別ブースや静かなエリアが有効です。一方、チームでの共同作業やプロジェクトベースの業務が多いなら、打ち合わせスペースやフリーアドレス席を設けると生産性が高まります。
また、リフレッシュや雑談の場を設けることでコミュニケーションを活性化できるケースもあります。
次の章で、執務室にあると便利な機能をご紹介します。「どんな機能を優先すべきか」を整理して、最適な執務室づくりの第一歩を踏み出しましょう。
【事例で紹介】執務室にあると便利な機能5選
執務室には様々な機能が求められます。それぞれのスペースに役割を持たせることで、空間を効率的にデザインできます。
リフレッシュスペース

デスクスペースのそばにリフレッシュスペースを設けることで、業務の合間に気軽にリラックスしたり、気分を切り替えたりすることができます。さらに社員同士の交流の場としても機能し、会話を通じてコミュニケーションが自然に生まれます。
近年では、適度な休憩が集中力の持続や仕事の効率化、意欲向上に効果的とされ、多くの企業が執務室内にリフレッシュスペースを取り入れています。
そこにコーヒーマシンや書籍コーナー、くつろげるソファなどを配置し、カフェのような雰囲気を演出することで、より心地よい空間を実現できるでしょう。

ミーティングスペース

会議室とは別に執務室内にミーティングスペースを設けると、ちょっとした打ち合わせや相談が気軽にできます。個人の作業スペースの近くに設置することで、思いついたアイデアや気になったことをチーム内ですぐに共有できるというメリットも。
簡易的な打ち合わせスペースでも十分ですが、高さを調整できる昇降式デスクを導入すれば、座っても立っても利用できる、より柔軟なミーティング環境をつくることができます。さらに、人数の増減に合わせてレイアウトを変えられるモジュール型の家具を取り入れたり、リラックスしながら自由なアイデアが出やすいように、インテリアに工夫を凝らしたカジュアルな雰囲気のスペースを設ける例もあります。

WEB会議専用ブース

Web会議が日常化する中で、自分のデスクから参加すると周囲に音が漏れ、騒がしさの原因になることがあります。逆に周囲の視線や作業音、音声などがWEB会議の妨げになることも。そこで執務室内に必要になるのが、WEB会議専用のブースです。
WEB会議専用ブースには、個室型やセミクローズ型、パーティションを用いたブース型などの種類があります。サイズは1人用から2~4人用までが一般的ですが、大人数での会議にも対応できる大型ブースもあります。
予算やスペース、求める機能などを比較検討したうえで選ぶようにしましょう。
集中ブース

集中ブースとは、ボックス型の席や仕切りを活用して周囲の視線や雑音を遮り、個人が業務に専念できるスペースのことを指します。執務エリアに導入することで、作業への集中度が高まり、生産性の向上にもつながります。
とくに間仕切りの少ないフリーアドレスやオープンなオフィスの場合、個人が集中できる環境を確保するためにも、区切られた集中ブースの導入を積極的に検討してください。
集中ブースは、1対1の面談や少人数でのミーティングにも適しています。先ほどのWEB会議専用ブースとの併用も可能なので、スペースや利用頻度に応じてレイアウトするようにしましょう。

ラウンジスペース

執務室内にラウンジスペースを設けると、リラックスしながら作業に集中でき、自然な会話や情報交換も生まれやすくなります。作業効率とコミュニケーションの両方を支える、働きやすい空間としての役割があります。
ラウンジスペースには、椅子とソファを組み合わせた席やカフェテリアのような設備、本が読めたりゲームができるエリアなどがあると、より多目的に使えるでしょう。使用用途としては、ソロワークはもちろんのこと、ミーティングやランチ、休憩などにも利用可能です。
執務室内にラウンジスペースがあることで、社員のストレスを軽減し、集中力の維持や新しいアイデアの創造が期待できます。

まとめ
執務室は、単なる作業スペースではありません。働きやすさや生産性を高めるために、最適なデザインが不可欠です。
執務室内にラウンジスペースやミーティングスペース、集中ブースやWEB会議専用ブースなどを設置できると、より多彩な働き方が可能に。
レイアウトを考える際は、まずコンセプトを明確にし、業務に合わせたデスク選びや配置が重要です。さらに、快適性と効率を両立させるオフィス家具の選定、トレンドを取り入れたデザインも欠かせません。
リリカラではデザインから施工、レイアウトや家具の調達までトータルでサポートしております。執務室の改修やオフィスの移転をご検討の場合は、ぜひ一度ご相談ください。

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