リモートワークの普及により、フリーアドレスを採用するオフィスが増えています。しかし一方で、フリーアドレスを苦痛に感じる社員も少なくありません。そこで今回は、フリーアドレスが苦痛にならないためのポイントや、フリーアドレスを成功させる方法について解説していきます。
フリーアドレスにしたものの反応がいまいち良くない、不満の声が上がりつつあるという場合には参考にしましょう!

オフィスのフリーアドレス化を成功に導く4つのステップをまとめたフリアド導入ガイドブックです。
フリーアドレスとは
まずはフリーアドレスの定義や目的、導入が広がった背景について見ていきます。
フリーアドレスの定義と目的
フリーアドレスとは、社員が固定の席を持たずに自由に働く場所を選べるというオフィスの運用スタイル。スペース効率の向上や働き方を多様化できるといったメリットがあり、コロナ禍により急激に進んだテレワークとの相性もいいので、多くの企業で年々導入が増加しています。
ある調査によると、フリーアドレスを利用できる人の割合は、2020年春からの調査以来、2024年にはついに半数を超え50.6%に達しています。
フリーアドレスには、部署の垣根を超えた社員間のコミュニケーションの活性化や限られたオフィススペースの有効活用、イノベーションの促進といった目的があり、企業側が意識するコスト削減と社員側のナレッジワークの促進の両面で期待できます。
出典:フリーアドレス導入率が初の5割超え、出社とテレワークの「理想の割合」に変化|日経XTECH

導入が広がった背景
フリーアドレスの導入が広がった背景には、「働く環境」の変化と「働き方」の変化という2つの変化が考えられます。
働く環境の変化でいうと、モバイルツールの普及や無線LANの整備などです。また紙の書類がデジタル化されクラウドで管理できるようになるなど、働く環境を取り巻くテクノロジーの進化は、フリーアドレスを採用する企業が増えた大きな理由です。
働き方の変化では、政府主導の「働き方改革」によりテレワークが推奨されるようになったことが考えられます。働く場所の選択肢が増え、テクノロジーの進化によって物理的な阻害要素がなくなったという理由から、フリーアドレスが新しい働き方として選択肢の一つとなっています。
フリーアドレス導入のメリット6選
この章では、フリーアドレスを導入することのメリットを6つご紹介します。
オフィス文化の発展に寄与
フリーアドレスを導入することで、社員は業務に最適な場所を自由に選択できるようになります。そのため、特定の部署やプロジェクトのメンバーと近くに座って気軽にコミュニケーションをとることができたり、部署の垣根を越えたさまざまな人と交流することで、新たな視点やアイデアが生まれるなど、コラボレーションの機会やイノベーションに向けたアプローチが促進。
フリーアドレスの導入は、社員の働き方だけでなく、オフィス文化全体にも良い影響を与えることができます。

スペース効率の向上とオフィスコストの低下
固定席を割り当てる伝統的なオフィス環境のデメリットの一つに、空席が発生するとスペースが無駄になる・広いオフィススペースが必要となり、賃貸コストが高まることが挙げられます。
しかし、フリーアドレスはレイアウトを柔軟に変更できるため、空席が発生した際に別の目的に活用できたりとオフィスの有効活用を図ることができます。また、固定席分のスペースを削減することで、賃貸コストの削減につながります。
働き方が多様化する
フリーアドレスを導入することで、社員が自分の作業環境を選択できるようになり、多様な働き方に対応しやすくなります。
例えば、「集中して作業したいときは静かな場所を選び、コミュニケーションをとりたいときはオープンな場所を選ぶことができる」「自分の好みやニーズに合わせて、デスクや椅子などの備品を自由に選ぶことができる」など。その結果、ワークライフバランスや会社の満足度の向上につながります。
オフィスの魅力が上昇
常に同じデスクで働くことが求められる固定席のオフィスは、働くことの新鮮味が次第に薄れていきます。これにより社員にとって魅力のある場所とは認識されにくくなり、単なる作業スペースとして捉えられることも。
しかしフリーアドレスを導入することで、社員は常に新しい刺激を受けることができ、仕事に対するモチベーションや満足度を高めることができます。その結果、定着率や採用率の向上につながります。
生産性・モチベーションの向上
フリーアドレスの導入により、社員の生産性やモチベーションの向上が期待できます。集中したいときには静かな個人ブースで、他の人とコミュニケーションを取りたいときはオープンなスペースでと、目的に応じて場所を選べるので作業の生産性向上に役立ちます。
またその日の気分や業務内容に合わせて、働く場所を選択できるのもフリーアドレスのメリット。毎日新鮮な気持ちで仕事に取り組めるので、モチベーションの向上にもつながるはずです。

BCP対策やリスク分散にも有効
フリーアドレスは、BCP(Business Continuity Plan=事業継続計画)対策やリスク分散の点でも期待できます。
災害などの緊急事態時、通常のフリーアドレス環境では社員の所在が把握しにくくなるという課題がありますが、位置情報サービスの活用によって社員の安否確認だけでなく、迅速な避難誘導が可能です。
さらに在席数に応じて柔軟にオフィススペースを活用できるため、一時的な業務スペースや災害時の非難スペースの確保にも役立つでしょう。
新形コロナをはじめとする感染症対策の点でも、フリーアドレスは有効です。フリーアドレスでは書類などの紙を極力減らすペーパーレス化が基本です。それによって、不特定多数の人が触れるであろうコピー機や、資料による接触感染リスクを抑えられます。

フリーアドレスのデメリット・苦痛に感じる理由7選
フリーアドレスを導入する会社は増えていますが、一方で、無視できないデメリットも存在します。この章ではフリーアドレスのデメリットを7つご紹介します。
座席確保のストレス・不満
フリーアドレスにおける座席確保のストレスや不満は、よくあるデメリットとして挙げられます。
毎日出社する度に席を探さなければならないという手間や、希望する席を確保できないという不満、また隣席になった人との相性の問題など、フリーアドレスに関する様々な要因が積み重なってストレスにつながってしまいます。
集中力の維持が困難に
フリーアドレスは、コミュニケーションを活性化するために導入されることが多いオフィスレイアウトです。壁や障壁が少ないオープンな空間設計とすることが多く、会話音が周囲に響きやすくなります。そのため集中力が低下したり、ストレスを感じたりする可能性があります。

荷物の持ち運びが大変
フリーアドレスのオフィスでは、従来はデスクに置いていた荷物をロッカーに移動する必要があります。そのため、持ち運ぶ機会が増え、整理整頓が難しくなり、作業効率が下がる可能性があります。
また、ロッカーは年々コンパクト化されており、収納できる荷物が減っています。そのため、ますます物の移動の手間が増えていくと考えられます。

プライバシーが維持されにくい
フリーアドレスを採用する企業は、オープンなコミュニケーションを重視する傾向にあります。そのため、フロアは仕切りや個室が少なく、社員は個別のデスクを持たず、共有デスクを使用します。
共有デスクは、仕切りや引き出しがなく、シンプルな作りが多いため、個人のスペースが制限され、作業や会話が他の人に見聞きされやすくなります。このため、個人のプライバシーに影響を与える可能性があります。

帰属意識が低下する可能性
固定席のオフィスは、同じ席に座り続けることで、同じ部署やチームのメンバーとの距離が縮まり、コミュニケーションが生まれやすくなります。そのため、部署やチームの一体感が醸成され、組織への帰属意識が高まります。
一方、フリーアドレスは、毎日席が異なるため、同じメンバーと顔を合わせる機会が減り、コミュニケーションが希薄になることが……。その結果、部署やチームの一体感が損なわれ、組織への帰属意識が低下する可能性があります。
コミュニケーション・人材育成が難しくなる
誰がどの席に座っているか分からないと、報連相がスムーズにできなくなってしまうなどコミュニケーションが思うようにいかないという不満が出てきます。
フリーアドレスには部署や部門の垣根を超えたコミュニケーションが活発になるというメリットがある一方で、所属単位でのコミュニケーションが不足しがちになるというデメリットが生じるためです。
またフリーアドレスだと、若いスタッフが上司や先輩の仕事ぶりを目にできる機会が減ってしまいます。質問や相談したいことがあっても、相手をすぐに見つけることができず、業務効率が低下する可能性が考えられます。
上司も部下を目の届くところで見守るのが難しくなるので、タイミングが良い指導ができなくなります。結果的に人材育成が難しくなるというデメリットが生じます。

電話・内線対応の手間
常に決まった席にいる訳でないので、外線や内線電話の対応に手間がかかります。例えば外部からの電話の取次ぎや来客時の対応など、フリーアドレスでどこにだれが座っているか分からないと、特定の社員を探すのに手間取ることは容易に想像できます。
自席で働いているときには、座席表をもとにして内線通話ができます。しかしフリーアドレスだと固定で内線番号を振られていないので、これまで通りの電話運用が不可能に。
個人のスマホ等に転送するシステムの導入や、電話代行サービスの利用など、運用を見直す必要が出てくるでしょう。
リリカラでもオフィス移転を機に、固定電話を廃止しました。下記のコラムでリリカラが実際に固定電話を廃止させた方法をご紹介しておりますので、ぜひご一読ください。

フリーアドレスが苦痛にならないための方法
ではフリーアドレスのデメリットを減らすためにはどのような取り組みを行えばよいのでしょうか?ここではその解消方法をご紹介します。
騒音を抑えて集中力を高める方法
オープンなフリーアドレス下でも集中してタスクに取り組めるよう、オフィス内に電話や集中作業を行うための静音エリアを設けましょう。
静音エリアの導入が難しい場合は、静かにする時間帯を設けて社員が自分のタスクに合わせて働く場所を時間帯で選べるようにします。同時に社員に対して会話禁止といったルールを明確にすることも忘れないようにしましょう。

所持品の管理と移動を楽にする方法
固定席がない環境でも整理整頓しやすいように、社員に個人用のロッカーや引き出しを用意しましょう。パーソナルなアイテムを収納できるので、自分のスペースを意識しやすくなります。また、書類や文書はデジタル化して必要なときにだけ印刷することで、紙の収納スペースを節約できます。
さらに、オフィス内にアートやグリーンを配置すると、美観が向上するだけでなく、整理整頓の意識も高まります。またフリーアドレスにすることで荷物を持ち運ぶ機会が必然的に増えます。下記のコラムでは、荷物の持ち運びを便利にするグッズを含めた6つのお役立ちグッズを紹介しています。ぜひご参考ください。
プライバシーを高める方法
オンライン会議や通話時などプライバシーが必要な場面に対応するために、予約可能な個室やセミクローズなエリアを用意するとよいでしょう。
また、オフィス内のコミュニケーションに関するルールを策定し、特にプライバシーが必要な場面では会話音を抑えるように周知。これにより、静かな環境が維持できプライバシーが確保され、スムーズなコミュニケーションが可能になります。

帰属意識を高める方法
フリーアドレス下でも帰属意識を維持する方法の一つに、オフィス内に社員の写真や自己紹介の掲示があります。自己紹介を掲示することにより、他の社員との接点が生まれやすくなり、コミュニケーションの形成に役立ちます。
また、部活動や社内ウェビナーなどのイベントを定期的に計画するのも効果的です。これらのイベントを通じて、社員同士のつながりを深め、共通の興味やバックグラウンド、専門知識を共有することで、社員のアイデンティティを深めながら、社内にアットホームな雰囲気を醸成することができます。

導入目的・ルールの明確化
フリーアドレスを導入する場合、導入の目的やルールの明確化が必須です。フリーアドレスの導入により、自分の席がなくなってしまうという不安を持つ社員が必ず出ます。
そのため事前にフリーアドレスの導入目的やルールについて、全社で共有しておくことが大切になるのです。
同時にアンケート等から、現在の働き方についてやオフィス環境への課題、フリーアドレスに関する不安な点などを吸い上げてください。それを踏まえて対策を取り、できるだけ不安を取り除けるようにしましょう。
新しい働き方に挑戦するときには、ディスカッション等を通して社員にその考えを浸透させることがポイントです。
フリーアドレスを成功させるための手順
フリーアドレスを成功させるために、次のようなポイントや手順で導入を進めていきましょう。
①導入目的・対象部門の検討
フリーアドレスの運用を成功させるために、まずは導入目的を明確にし、対象部門をどこにするか検討します。
フリーアドレスをすべての部門に一気に導入するケースは少なく、最適な部署や部門を決めて採用するのが一般的です。
例えば取引先への訪問など外出が多い営業部門や、会議・ミーティングが多い企画部門、他にも在席率が低い職種やノートパソコンがあれば業務ができる部門が適しています。
そしてフリーアドレスを導入する場合は、前向きに協力してもらえるよう目的やメリット、働き方への影響などを事前に社員に説明するようにしましょう。

②座席数・配置計画の設計
フリーアドレス対象部門を決定した後は、座席数や配置計画の設計に移ります。オフィスに設置する座席数の割合「座席設定率」をもとに、必要な座席数とスペースを算出し、デスクの数やレイアウトを決めていきます。
業務内容や目的に応じたゾーニング、スムーズな移動を可能にする動線設計も必要です。
同時に導入するデスクの種類やサイズの選定も行ってください。増連結可能なデスクなどを取り入れれば、将来的な社員数の増減にもフレキシブルに対応できるでしょう。
③柔軟性の高いオフィスデザイン設計
フリーアドレスの最大のメリットは、社員が作業の内容に合わせて適切な環境を選択できることで、業務の生産性が向上することです。このメリットを最大限に享受できるよう、柔軟性が高いデザインを採用するとよいでしょう。オープンスペース、プライベートエリア、静音エリア、リラックスエリア、会議室など様々なバリエーションの作業スペースを用意しつつ、集中作業に適した音響設計を行うことが重要です。
また可動式の家具や個人のアイテムを収納できるスペースを提供することで、社員がオフィススペースをカスタマイズできるようにします。これにより個人のニーズに合った快適な環境が簡単に構築できます。

④社員への説明とトレーニング
フリーアドレスの導入には、社員の理解と協力が不可欠です。そのため、変更の背景や目的を丁寧に説明し、意見交換をしながら、社員に新しい環境への理解を促しましょう。
他社のフリーアドレス導入事例を共有すると、社員のモチベーションアップにつながります。また、本格的な導入前に、フリーアドレスの試行期間を設けることで、メリットや注意点を体感してもらい、導入をスムーズに進めることができます。
⑤適切なテクノロジーの導入
フリーアドレスを効果的に運用する上で、テクノロジーの導入は必須です。ここでは重要なシステム・ツールをご紹介します。
座席予約システム

座席予約システムは、社員が自分の希望する座席を予約できるシステムです。フリーアドレスのオフィスや、複数のチームが同じオフィスを共有している場合に便利です。ウェブベースのアプリやデスクトップソフトウェアを通じて利用することができ、外出先からでも予約できます。
このシステムを導入することで、オフィスの混雑を避け、必要な場所を確保できるようになります。
ワークプレイス分析ツール

センサーやビーコンを活用したデータ収集システムは、オフィス内の利用状況や混雑度などのデータをリアルタイムで収集するシステムです。このシステムを導入することで、スペースの最適な配置や設計を決定し、業務効率の向上やコスト削減につなげることができます。
デジタルサインツール
デジタルサインツールとは、オフィス内に設置されたスクリーンやサイネージを通じて、さまざまな情報をリアルタイムで表示・共有できるツールです。会議室の利用状況や空席情報、社内のお知らせなど、用途に応じて柔軟に活用でき、業務の効率化や情報共有の促進に役立ちます。
このツールを導入することで、社員は必要な情報をいつでもどこでも簡単に取得できるようになり会議のスケジュール調整がスムーズになります。また表示された情報をきっかけに、社員同士がコミュニケーションをとる機会が増えます。
オンラインカンファレンスツール

オンラインカンファレンスツールとは、リモートワーカーとのコミュニケーションをサポートするツールです。このツールを使用することで会議室や個人用のスペースでビデオ会議をスムーズに行えるようになります。音声や映像だけでなく、チャットやホワイトボードなどの機能も利用可能で、リアルタイムでのコミュニケーションが可能です。
最近では、AIによる音声認識・文字起こしやライブ配信機能を備えたものも登場しています。自社のニーズや予算に合わせて、適切なツールを選びましょう。
⑥フィードバッグの収集と改善のサイクル
フリーアドレスの効果を持続させるために、導入後は社員からフィードバックを収集し、課題を特定して改善策を検討しましょう。
直接フィードバックをもらうミーティングを実施すると、オープンで率直な対話が生まれ、フィードバックの質が向上します。また、匿名のアンケートを実施すると、率直な意見が集まりやすくなります。より具体的な改善点を浮かび上がらせるために、フィードバックの方法を組み合わせるとよいでしょう。
この収集は定期的に行うことが重要です。継続的な改善を行うことで、フリーアドレスの効果を最大限に引き出すことができます。

まとめ
フリーアドレスを導入することで、オフィスの魅力が上がり社員の生産性も高まります。しかし、導入を成功させるためには様々な準備と検討が必要です。
リリカラでは、フリーアドレスの導入をサポートいたしますので、いつでもご相談くださいませ。
またリリカラの日比谷オフィスではフリーアドレスを採用しております。オフィス活性化への様々な工夫が施されておりますので、ぜひ一度ご見学ください!
